
鉄骨を扱う工事であっても、すべてが鋼構造物工事に該当するわけではありません。鉄骨の製作・加工から組立てまでを一貫して請け負う場合は鋼構造物工事、既に加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負う場合は、とび・土工・コンクリート工事に該当します。
この区分で重要になるのは、工事名や自社が現場で行う作業だけではなく、注文者からどこまでの工事を請け負ったかです。国土交通省の現行の「建設業許可事務ガイドライン」では、鉄骨工事と鉄骨組立工事について、この請負範囲による区分が示されています。
| 請け負った範囲 | 建設工事の種類 | ガイドライン上の呼称 |
|---|---|---|
| 鉄骨の製作・加工から組立てまでを一貫して請け負う | 鋼構造物工事 | 鉄骨工事 |
| 既に加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負う | とび・土工・コンクリート工事 | 鉄骨組立工事 |
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鉄骨に関する工事は請け負った範囲で業種が分かれる
建設業法では、建設工事を29種類に区分しています。そのうち各建設工事の内容は、昭和47年3月8日建設省告示第350号で定められています。
鋼構造物工事は、形鋼や鋼板などの鋼材を加工または組み立てることによって工作物を築造する工事です。一方、とび・土工・コンクリート工事については、告示で工事内容がイからホまで示されており、そのうちイには、足場の組立てや重量物の運搬配置とともに、鉄骨等の組立てを行う工事が含まれています。
もっとも、告示によって各工事の内容が定められていても、鋼構造物工事ととび・土工・コンクリート工事のどちらにも鉄骨の組立てに関係する工事が含まれます。そのため、定義だけでは両者の違いが分かりにくい場合があります。
この点を補うものとして、国土交通省が建設業許可事務の取扱いを示した「建設業許可事務ガイドライン」では、鉄骨工事と鉄骨組立工事の具体的な区分が示されています。
同様に、福島県の「建設業許可申請の手引(令和8年5月改訂版)」でも、とび・土工工事業の工事例として「鉄骨組立て工事」、鋼構造物工事業の工事例として「鉄骨工事」が掲載されています。
製作・加工から組立てまで請け負う場合は鋼構造物工事
国土交通省のガイドラインでは、鉄骨の製作・加工から組立てまでを一貫して請け負う工事を、鋼構造物工事における鉄骨工事としています。
つまり、現場で鉄骨を組み立てる作業が含まれているという理由だけで、とび・土工・コンクリート工事になるわけではありません。
注文者から鉄骨の製作・加工を含め、現場での組立てまでを一つの工事として請け負っている場合は、鋼構造物工事に該当します。
加工済みの鉄骨を現場で組み立てる場合はとび・土工・コンクリート工事
これに対して、既に加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負う場合は、とび・土工・コンクリート工事における鉄骨組立工事です。
例えば、鉄骨の製作や加工は請負範囲に含まれておらず、現場へ搬入された加工済みの鉄骨について、建方や組立てだけを請け負う場合が該当します。
このように、同じ鉄骨を扱う工事であっても、製作・加工から組立てまでを一貫して請け負っているのか、加工済みの鉄骨の現場組立てだけを請け負っているのかによって、建設業法上の工事の種類が異なります。
工事名ではなく請け負った内容で判断する
契約書や注文書に「鉄骨工事」「鉄骨建方工事」などと記載されていても、その工事名だけで建設業法上の業種を判断することはできません。
このため、国土交通省のガイドラインも、工事の名称だけではなく、製作・加工から組立てまでを一貫して請け負うのか、加工済みの鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負うのかによって両者を区分しています。
建設工事をどの業種に区分するかという基本的な考え方については、「建設業許可29業種の工事区分と業種判定を行政書士が解説」でも説明しています。
注文書・契約書・見積書から請負範囲を確認する
実際に業種を判断するときは、注文書、請書、工事請負契約書、見積書などから、注文者との間でどのような工事を請け負ったのかを確認します。
例えば、工事名が「鉄骨工事」であっても、実際の請負内容が加工済みの鉄骨の現場組立てだけであれば、とび・土工・コンクリート工事に該当します。
反対に、製作・加工から組立てまでが請負範囲に含まれていれば、鋼構造物工事として判断します。したがって、工事名称ではなく、見積書の内訳などから具体的な請負内容を確認することが重要です。
製作を外注している場合も請負範囲を確認する
では、注文者から鉄骨の製作・加工から組立てまでを一括して請け負い、そのうち鉄骨の製作を別の会社へ外注した場合はどう考えればよいでしょうか。
この場合、国土交通省のガイドラインは、鉄骨の製作・加工から組立てまでを一貫して「請け負う」場合を鋼構造物工事の鉄骨工事としています。一方、鉄骨の製作を自社で行う必要があるかどうかについては、ガイドラインでは触れられていません。
注文者から製作・加工・組立てまでを一括して請け負い、その一部である製作工程を他社へ外注した場合でも、注文者との関係では製作から組立てまでが自社の請負範囲に含まれています。
そのため、このような工事についても、ガイドラインの「製作、加工から組立てまでを一貫して請け負う」という区分から、鋼構造物工事に該当すると考えられます。
ただし、注文者から請け負った内容そのものが、既に加工された鉄骨の現場組立てだけであれば、とび・土工・コンクリート工事です。鉄骨を誰が製作したかだけではなく、自社が注文者からどこまでを請け負ったのかを確認する必要があります。
なお、ガイドラインに明示されている区分だけでは判断が難しい請負内容については、個別の契約内容を確認したうえで、許可行政庁へ確認することも検討する必要があります。
鉄骨工事と鉄骨組立工事では必要な許可業種が異なる
鉄骨工事と鉄骨組立工事では、必要となる建設業許可の業種も異なります。軽微な建設工事を除き、建設工事を請け負うためには、その工事に対応する業種の許可を受ける必要があります。
したがって、鋼構造物工事業の許可を受けていても、加工済みの鉄骨を現場で組み立てる工事を単独で請け負う場合は、とび・土工工事業の許可が必要となるかを確認しなければなりません。
反対に、とび・土工工事業の許可だけを受けている会社が、鉄骨の製作・加工から組立てまでを一貫して請け負う場合は、鋼構造物工事業の許可が必要となるかを確認する必要があります。
鉄骨に関する工事を請け負う際は、工事名ではなく実際の請負範囲を確認し、取得している許可業種と対応しているかを判断することが重要です。




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行政書士 佐藤勇太
