
産業廃棄物収集運搬業許可の許可要件の1つに、申請者が事業を的確かつ継続して行うに足りる「経理的基礎」を有していることがあります。そのため、法人が許可を申請する際には、原則として直前3年間の貸借対照表や損益計算書などを提出し、財務内容の審査を受けます。
「会社の決算が赤字だから、産業廃棄物収集運搬業許可は取得できないのではないか」「債務超過の状態では、申請しても認められないのではないか」と不安に感じる事業者もいるでしょう。しかし、赤字や債務超過であることだけを理由に、直ちに許可を取得できないわけではありません。
経理的基礎の審査では、過去の決算内容に加え、今後の収益見込みや経営改善の可能性も考慮されます。この記事では、赤字・債務超過の会社が確認すべき決算内容、必要となる追加書類、経営診断書を依頼できる専門家について解説します。
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赤字・債務超過でも直ちに不許可とはならない
経理的基礎とは、産業廃棄物の収集運搬を一時的に始められるかではなく、事業を適正に継続できる財務上の基盤があるかという要件です。審査では、決算書、納税証明書、事業開始に必要な資金とその調達方法などが確認されます。
環境省通知では、利益が計上されていること、または自己資本比率が10%を超えていることに加え、申請する事業について将来の適切な収益が見込まれることが望ましいとされています。ただし、これらを満たさなければ直ちに不許可になるという基準ではありません。
過去3年間の損益平均が赤字でも、直前期が黒字に転換し、経営改善の見込みがある場合には、認められる余地があります。自己資本比率が10%以下でも、債務超過ではなく、事業継続または経営改善の見込みがある場合も同様です。
また、法令上の許可要件を満たしている場合、福島県が許可するかどうかを自由に選べるものではありません。経理的基礎に適合しているかは個別に審査されますが、すべての許可要件を満たすと判断されれば、許可される性質の手続です。
福島県が令和8年6月版手引きで判断の目安を明示
福島県では、令和8年6月版の手引きが公表される以前から、環境省通知に沿って経理的基礎の審査が行われていました。決算内容によっては、許可申請書と一緒に経営診断書を提出する場合もあれば、申請後に追加で提出する場合もありました。
令和8年6月版の福島県手引きでは、通常の許可申請について「審査基準」という項目が設けられました。どのような決算内容の場合に、事業収支計画書や診断書等が必要になるのか、その判断の目安も具体的に示されています。
手引きでは、診断書等が必要な場合、許可申請時または許可申請後に速やかに提出することとされています。申請後に提出することも可能ですが、現在は申請前から必要書類を予測し、専門家への依頼、作成期間、費用を早めに見込めるようになりました。
私自身、申請者が事前に確認できる審査基準を明示することは重要だと考えており、今回の改訂は実務上意義のあるものだと感じています。
経理的基礎は3つの決算指標から確認される
営業実績が3年以上ある法人について、福島県の手引きでは、主に次の3項目を組み合わせて判断の目安を示しています。
- 直前期の自己資本比率
- 直前3年間の経常利益の平均値
- 直前期の経常利益
ここでいう赤字とは、主に損益計算書上の経常利益がマイナスである状態です。一方、債務超過は、貸借対照表上の純資産がマイナスとなり、自己資本比率もマイナスになる状態を指します。
したがって、単年度が赤字であることと、債務超過であることは同じではありません。決算書のどの数字が問題となっているのかを分けて確認する必要があります。
決算内容によって必要な追加書類が異なる
福島県の手引きでは、審査上の対応を「原則基礎認定」「事業収支計画書」「診断書等」に分けています。建設業者の申請で多い積替え・保管なしの場合は、次のような取扱いになります。
| 決算内容 | 主な対応 |
|---|---|
| 自己資本比率10%以上で、3年平均または直前期が黒字 | 原則基礎認定 |
| 自己資本比率10%以上で、3年平均と直前期がともに赤字 | 診断書等 |
| 自己資本比率0%以上10%未満で、3年平均が黒字 | 原則基礎認定 |
| 自己資本比率0%以上10%未満で、3年平均が赤字、直前期が黒字 | 事業収支計画書 |
| 自己資本比率0%以上10%未満で、3年平均と直前期がともに赤字 | 診断書等 |
| 自己資本比率がマイナスで、3年平均と直前期がともに黒字 | 原則基礎認定 |
| 自己資本比率がマイナスで、3年平均が黒字、直前期が赤字 | 事業収支計画書 |
| 自己資本比率がマイナスで、3年平均が赤字 | 診断書等 |
この表からも、1期だけ赤字だから必ず追加書類が必要になるわけではなく、債務超過だから必ず不許可になるわけでもないことが分かります。
例えば、直前期の自己資本比率がマイナスでも、直前3年間の経常利益の平均値と直前期の経常利益がともに黒字であれば、積替え・保管なしの申請では「原則基礎認定」とされています。
一方、積替え・保管を含む許可では、一部の組合せについて、積替え・保管なしの場合より慎重な取扱いが示されています。また、この表は判断の目安であり、事業収支計画書や診断書等だけで経理的基礎の有無が決まるものではありません。
事業収支計画書と経営診断書に記載する内容
事業収支計画書は、今後5年間の売上や借入金などの収入と、経費や返済などの支出を予測し、手元に残る現金の流れを示す書類です。福島県では任意様式とされていますが、単に売上が増えるという見込みを書くのではなく、その根拠を示す必要があります。
営業実績が3年未満で、過去3年間の決算書を準備できない法人や個人についても、今後5年間の事業収支計画書を提出することとされています。
診断書等が必要な場合は、申請者が作成した事業収支計画書をもとに、中小企業診断士または公認会計士が診断します。赤字や債務超過に至った原因、改善策、売上や資金繰りの見通し、計画の実現可能性などが検討されます。
診断書を提出すれば、必ず経理的基礎が認められるわけではありません。福島県が設置する経理的基礎検討会で判断される場合もあり、決算内容や今後の事業計画を踏まえて審査されます。
また、環境省通知では、経理的基礎を有しないと判断する際には、金融機関からの融資状況を示す書類や、中小企業診断士の診断書等を必要に応じて提出させ、慎重に判断することが求められています。
経営診断書を依頼できる専門家と探し方
中小企業診断士は、中小企業の経営状況を診断し、経営改善や事業計画について助言する専門家です。公認会計士は、会計や財務を専門とし、財務内容の分析や事業計画の検討にも対応します。
福島県の手引きでは、診断書等を作成する専門家として、中小企業診断士または公認会計士が示されています。顧問税理士がいる場合でも、税理士資格だけでは、この診断書等を作成する専門家には該当しません。
中小企業診断士は、福島県中小企業診断協会の会員紹介などから探す方法があります。公認会計士については、日本公認会計士協会の公認会計士等検索システムで登録情報を確認できます。
このほか、顧問税理士や取引金融機関から紹介を受ける方法も考えられます。ただし、資格を持っていれば誰でも同じように対応できるとは限りません。
依頼前には、産業廃棄物処理業許可の診断書に対応できるか、作成期間と費用、県から補足説明を求められた場合の対応などについて確認しておくとよいでしょう。
当事務所では、経営診断書そのものを作成するわけではありませんが、対応可能な専門家をご紹介できます。依頼先が見つからない場合には、許可申請の準備とあわせてご相談ください。
赤字・債務超過の場合は申請前に決算書を確認する
赤字や債務超過であっても、それだけで産業廃棄物収集運搬業許可を諦める必要はありません。しかし、講習会の受講や車両の準備だけを進め、申請直前になって決算内容を確認すると、事業収支計画書や経営診断書等の準備が間に合わないことがあります。
法人の場合は、早い段階で直前3年間の貸借対照表と損益計算書を確認し、自己資本比率、直前3年間の経常利益の平均値、直前期の経常利益を把握することが重要です。
当事務所では、決算内容を確認したうえで、産業廃棄物収集運搬業許可の申請書作成、必要書類の収集、行政窓口への申請に対応しています。経営診断書等が必要となる場合には、対応可能な中小企業診断士をご紹介することもできます。
当事務所のサービス内容、料金、ご依頼から許可取得までの流れについては、福島県で産業廃棄物収集運搬業の許可を取りたい方へをご確認ください。 赤字や債務超過があり、追加書類が必要になるか分からない場合には、申請準備を始める前の段階からご相談ください。




事務所横に1台分の駐車場をご用意しております。
行政書士 佐藤勇太
