
令和8年(2026年)7月1日以降の申請から、経営事項審査、いわゆる経審の審査基準が改正されています。これは、令和8年2月6日に公布された国土交通省告示と、これに伴う事務取扱い通知に基づくものです。
今回の改正では、評価項目の新設、配点変更、加点対象の拡大、審査項目の削除が同時に行われました。主な対象は「その他の審査項目(社会性等)」、いわゆるW点に関する部分です。
公共工事の入札参加資格を維持している建設業者様にとっては、自社の総合評定値(P点)にどのような影響が生じるのか、早めに確認しておきたいところでしょう。なお、今回の改正のポイントは次の3点です。
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の新設
- 経審の加点対象となる建設機械の追加
- 社会保険加入に関する審査項目の削除
以下では、この順番に沿って法改正内容を解説していきます。解説のメインは、新しく制定された「自主宣言制度」についての情報です。
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建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(愛称:職人いきいき宣言)は、技能者の処遇改善に取り組む事業者が、その取組内容を公表する制度です。この制度は、建設業界の担い手の育成と確保を目的として創設されました。
自主宣言は、国土交通省の専用ポータルサイトから申請します。元請事業者または下請事業者の立場で宣言し、所定の要件を満たした場合には、W評点を算定するための基礎点として5点が加算されます。
もちろん、この5点が総合評定値Pにそのまま加算されるわけではありません。自主宣言を含む各項目からW評点を算定し、そのW評点が一定の割合でP点に反映されることになります。
自主宣言の加点と審査基準日
加点を受けるには、審査基準日において、元請事業者または下請事業者としての自主宣言が有効である必要があります。決算日の後に宣言しても、その決算日を審査基準日とする経審では加点されません。
経審申請では、宣言書に加えて、取組開始日以降に宣言内容を実施すること、または既に実施していることについての誓約書も提出します。なお、発注者の立場でも宣言できますが、経審の加点対象にはなりません。
CCUSの配点変更との関係
自主宣言の5点が新設される一方で、CCUS(建設キャリアアップシステム)を利用した就業履歴の蓄積に関する配点は引き下げられました。
民間工事を含むすべての対象工事で措置を実施している場合は15点から10点に、すべての公共工事で実施している場合は10点から5点に変更されています。
そのため、これまでCCUS関係で15点を取得していた事業者は、改正後、自主宣言による5点を併せて取得することで、従来と同じ基礎点の15点を確保できます。一方、これまでCCUSにより加点を受けていた事業者は、自主宣言に取り組まなければ減点となります。
自主宣言の必須項目
自主宣言を行うには、事業者の立場に応じた必須項目に賛同し、実際に取り組む内容を申告する必要があります。必須項目は、主に次の3分野で構成されています。
労務費の確保や賃金支払い等のための取組
元請事業者と下請事業者には、労務費や材料費等の内訳を明示した見積書を作成することや、下請から提出された見積内容を考慮し、尊重することが求められます。また、技能者の適切な処遇を確保するための取り組みの実施も必要です。
CCUSの活用
元請事業者は、技能者が就業履歴を蓄積できる環境を整備し、技能者を雇用している場合には、雇用するすべての技能者について詳細型登録を行う必要があります。また、下請事業者についても、雇用するすべての技能者の詳細型登録が必須となります。
宣言企業との取引の優先
元請事業者、下請事業者、発注者のいずれも、取引先を選定する際に、相手方が自主宣言を行っているかどうかを考慮することが求められます。
任意項目と宣言内容の公開
必須項目とは別に、処遇改善、適正な請負契約、スキルアップ、労働安全衛生、生産性向上など9分野から、最大5項目を記載できる任意項目があります。任意項目は無記載でも申請できます。
なお、宣言後は、企業名、代表者名、宣言の立場、取組内容などがポータルサイトで公開されます。宣言と実際の取組に大きな違いがあれば、取引先や技能者などの第三者が確認できるため、実施可能な内容を選ぶことが重要です。
取り下げ、取消し、虚偽申請のリスク
取組開始日までに宣言内容を実施できなかった場合には、企業側で自主宣言を取り下げる必要があります。取り下げを行わなかった場合には、再申請が1年間できなくなることがあります。
また、宣言内容に疑義が生じ、事務局からの問い合わせに誠実に回答しない場合や、虚偽・悪質な疑義が解消されない場合には、宣言が取り消されることがあります。必要に応じて関係機関へ情報提供が行われる場合もあります。
なお、経審申請で誓約書を提出しながら、取組開始日以降も宣言内容を実施していない場合には、虚偽申請として建設業法に違反するおそれがありますので注意が必要です。自主宣言は加点だけでなく、宣言後の実施と説明責任まで含む制度として捉えることが重要です。
自主宣言の申請要件と有効期間
自主宣言は、事業規模や建設業許可の有無を問わず申請できます。ただし、役員に暴力団員等がいないことや、建設業法に基づく指示処分以上の行政処分を受けた日から1年以上が経過していることなど、一定の要件があります。
有効期間は、申請日の翌月を起算日として2年を経過した後、最初に到来する12月末までです。継続する場合には再申請が必要であり、シンボルマークは、宣言内容が掲載され、取組開始日を迎えた後に使用が可能となります。
経審の加点対象となる建設機械の追加

W7の「建設機械の保有状況」では、不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが新たに加点対象となりました。令和6年能登半島地震の応急復旧工事で活用された実績などを踏まえ、災害対応力を評価する観点から追加されたものです。
そのため、対象機械を所有している事業者や、一定のリース契約を締結している事業者は、新たに加点を受けられる可能性があります。ただし、使用しているだけでは足りず、審査基準日に所有しているか、審査基準日から1年7か月以上のリース契約を締結している必要があります。
さらに、不整地運搬車には特定自主検査、アスファルト・フィニッシャには所定の自動車検査が求められます。機械の種類だけでなく、所有関係、リース期間、検査記録や車検証の内容まで確認しておくことが重要です。
なお、建設機械の保有状況に関する最高点は改正後も15点です。点数自体が増えたのではなく、加点対象となる機械の種類が、従来の9種類から11種類に増えたということになります。
社会保険加入に関する審査項目の削除

これまでW点に含まれていた、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況に関する審査項目が削除されました。改正前は、未加入の場合、各項目40点、最大で合計120点が減点されていました。
今回、この減点項目自体がなくなりました。社会保険への適切な加入が、すでに建設業許可と更新の要件として定着し、許可審査で確認される仕組みが一巡したことを踏まえた見直しです。
ただし、削除されたのは経審のW点における評価項目だけです。社会保険への加入が建設業許可の要件であることや、加入義務のある事業者に適切な届出が求められることに変更はありません。
福島県における新様式への対応
福島県でも、令和8年7月1日以降に提出される経審申請(経営規模等評価申請・総合評定値請求)から、新しい審査基準と様式に切り替えられました。自主宣言制度に関する誓約書が様式第7号として新設され、その他の審査項目や建設機械の保有状況一覧表も更新されています。
福島県は、令和8年7月1日以降の申請について、旧様式では受け付けないと案内しています。改正前に保存した様式をそのまま使わず、県の公式ページから最新の手引きと様式を取得する必要があります。
まとめ:経審改正への対応で確認しておきたいこと
今回の改正は、①自主宣言制度の新設とCCUS関係の配点変更、②建設機械の加点対象拡大、③社会保険加入項目の削除という3つのポイントから整理することができます。
特に自主宣言制度では、審査基準日との関係、宣言する立場、誓約書の提出、宣言後の取組実施まで確認が必要です。単にポータルサイトから申請すれば足りる制度ではありません。
令和8年7月1日以降の申請には新しい基準と様式が適用されます。経審の準備を進める際には、使用する様式が最新版であるか、対象機械や自主宣言に必要な確認資料がそろっているかを早めに確認しておきましょう。
福島県内における経審の申請準備や、自主宣言制度への対応についてお困りの場合は、建設業許可を専門とする当事務所にご相談ください。




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行政書士 佐藤勇太
