![]()
元請業者から住宅の解体工事を請け負っています。現場には家具や布団、家電などが残されており、これらも解体廃材と一緒に運んでほしいと言われました。
当社は産業廃棄物収集運搬業許可を持っています。この許可があれば、解体前から住宅に残されていた物も運搬できるのでしょうか。
![]()
産業廃棄物収集運搬業許可だけでは、一般家庭の残置物を収集運搬することはできません。
一般家庭に残された家具や布団などは一般廃棄物です。解体工事によって発生する木くずやがれき類などの産業廃棄物とは扱いが異なります。
解体前から建物内にある残置物は、建築物の所有者等が処理責任を負い、解体工事の開始前に市町村のルールに従って処理する必要があります。
したがって、元請業者から「残っている家財も解体廃材と一緒に運んでほしい」と頼まれた場合でも、産業廃棄物と家庭の残置物を区別して対応しなければなりません。
コンテンツ
解体廃棄物と残置物では処理責任者が異なる
環境省は、平成30年6月22日付け「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて(通知)」で、解体物と残置物の処理責任を区別しています。
まず、解体工事によって生じた廃棄物については、廃棄物処理法第21条の3第1項により、注文者から直接工事を請け負った元請業者が事業者として処理責任を負います。
一方、解体前から建物内に残されていた廃棄物については、建築物の所有者等が処理責任を負います。環境省通知では、解体工事を行う前に所有者等が残置物を適正に処理する必要があるとしています。
| 区分 | 主な例 | 処理責任を負う者 | 廃棄物の扱い |
|---|---|---|---|
| 解体物 | 解体によって生じた木くず、がれき類等 | 解体工事の元請業者 | 産業廃棄物となる場合が多い |
| 家庭の残置物 | 家具、布団、家電、生活用品等 | 建築物の所有者等 | 一般廃棄物 |
下請業者からすれば、どちらも同じ解体現場にある物です。しかし、元請業者から収集運搬を委託された解体廃棄物と、工事前から住宅内に残されていた家財では、廃棄物処理法上の扱いが異なります。
環境省が別紙1「残置物の円滑な処理事例」として紹介している岐阜県の資料では、机・椅子、タンス、ベッドなどを残置物として例示する一方、作り付けの家具は解体・リフォーム工事の対象物としています。
産廃の許可では家庭の残置物を運べない
解体工事によって発生した木くず、がれき類、廃プラスチック類などは産業廃棄物です。
元請業者が排出事業者となり、その収集運搬を下請業者など他の事業者へ委託する場合には、委託を受ける業者は、対象となる産業廃棄物を取り扱える産業廃棄物収集運搬業許可を受けている必要があります。
これに対して、一般家庭に残された家具、布団、食器、生活用品などは一般廃棄物です。産業廃棄物収集運搬業許可は、一般廃棄物を収集運搬するための許可ではありません。
環境省の「残置物の適正処理のお願い」では、次の許可を持っていても一般廃棄物を処理できないことが明記されています。
- 産業廃棄物処理業の許可
- 解体工事業の許可
- 古物商の許可
そのため、下請業者が産業廃棄物収集運搬業許可を持っており、普段から解体工事で生じた産業廃棄物を運搬していたとしても、その許可を使って家庭の残置物まで一緒に運搬することはできません。
もちろん、解体廃棄物と残置物を同じ車両に積み込み、まとめて産業廃棄物として処理することもできません。
(環境省「全国廃棄物・リサイクル行政主管課長会議資料 平成30年6月25日」の残置物リーフレットより)
店舗や事務所の残置物は種類によって扱いが異なる
ところで、店舗や事務所など、事業活動を行っていた建物の残置物は、家庭の残置物とは扱いが異なります。
環境省通知では、事業活動を行う者が排出する残置物について、その種類や性状によって一般廃棄物または産業廃棄物になるとしています。
そのため、店舗や事務所の残置物については、何が残されているのかを把握したうえで、産業廃棄物か一般廃棄物かを判定する必要があります。
産業廃棄物に該当する場合は、残置物の排出者である建築物の所有者等が排出事業者として、その種類を事業の範囲に含む産業廃棄物収集運搬業者へ収集運搬を委託します。
委託契約やマニフェストについても、排出事業者である所有者等が対応します。元請業者や下請業者の解体廃棄物として処理することはできません。
一方、事業者が一般廃棄物の運搬や処分を他人に委託する場合には、廃棄物処理法第6条の2第6項により、一般廃棄物処理業者その他環境省令で定める者へ委託しなければなりません。
「残置物だからすべて一般廃棄物」「解体現場にあるからすべて産業廃棄物」と一律に判断することはできません。
残置物の運搬を頼まれた下請業者の対応
元請業者から家庭の残置物の運搬まで頼まれた場合でも、産廃の許可だけで引き受けることはできません。
一般廃棄物である残置物の処理を受託する場合、産業廃棄物処理業の許可を受けているだけでは足りず、市町村から残置物の処理に係る委託を受けるか、一般廃棄物処理業の許可を受ける必要があります。
通常の住宅解体では、まず建物の所有者等が、その市町村のルールに従って残置物を処理します。具体的には、次のような対応が考えられます。
- 所有者等が市町村の指定する方法で排出する
- 粗大ごみなどは市町村が定める方法で処理する
- 必要に応じて、市町村から案内された一般廃棄物処理業者等へ依頼する
- 残置物の処理が終わってから解体工事を開始する
環境省通知では、一般廃棄物に該当する残置物について相談があった場合、都道府県及び市町村に対し、その市町村の一般廃棄物処理計画に沿った処理方法として、適切な排出方法や、市町村が自ら処理しない廃棄物について連絡すべき一般廃棄物処理業者等を示すよう求めています。
また、前述の岐阜県の資料では、地方公共団体、一般廃棄物処理業者、建設業者等が連携し、発注者や元請業者へ適正な処理方法を周知する取組が紹介されています。
下請業者としては、残置物をそのまま積み込むのではなく、元請業者へ一般廃棄物であることを伝え、発注者・所有者等による事前処理を求める対応が必要です。
なお、残置物の中にエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機など家電リサイクル法の対象となる家電が含まれている場合には、同法に基づく処理方法に従う必要があります。
一般廃棄物の無許可運搬には罰則がある
一般廃棄物である家庭の残置物を、必要な許可を受けずに業として収集運搬すると、廃棄物処理法の罰則の対象になります。
廃棄物処理法第7条第1項では、一般廃棄物の収集または運搬を業として行う場合、原則として市町村長の許可を受けなければならないと定めています。
この許可を受けずに一般廃棄物の収集運搬を業として行った場合は、廃棄物処理法第25条第1項第1号により、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の対象となります。
また、廃棄物処理法違反は刑事罰にとどまらず、事業者が保有する産業廃棄物処理業許可や建設業許可との関係も問題になります。詳しくは、廃棄物処理法違反は建設業にも影響|罰則と許可取消しを解説 の記事をご覧ください。
工事前に残置物の処理方法を決めておく
残置物が解体工事の直前まで残っていれば、その処理が終わるまで予定どおり工事を開始できないことがあります。
そのため、元請業者だけでなく、実際に現場で解体工事を行う下請業者も、現地の状況を把握した段階で残置物の扱いに注意する必要があります。
工事の契約を締結するにあたっては、特に次の点をチェックしておくとよいでしょう。
- 家具や生活用品など、解体前からの残置物がないか
- 家電など、個別の処理方法が必要な物が含まれていないか
- 誰が残置物を処理するのか、処理方法が決まっているか
- 元請業者から依頼された運搬の範囲に残置物が含まれていないか
もし、残置物があることに気付いた場合には、「元請から運搬を頼まれているから」とそのまま積み込むのではなく、元請業者へ伝え、処理方法を決めてから工事を進めることが重要です。
発注者と元請業者の間でも、解体工事の契約時点で誰が残置物を処理するのかを決めておけば、「家の中の物も解体工事代金に含まれていると思っていた」といった認識の違いを防ぎやすくなります。
また、残置物の処理が終わる時期をあらかじめ把握し、解体工事の着手時期と調整しておくことも必要です。
まとめ:残置物は廃棄物の区分に応じて処理する
解体工事によって発生した産業廃棄物と、工事前から建物内に残されていた物では、廃棄物処理法上の扱いが異なります。
一般家庭の家具や布団などの残置物は一般廃棄物です。下請業者が産業廃棄物収集運搬業許可を持っていても、その許可だけで収集運搬することはできません。
元請業者から残置物の運搬まで求められた場合には、そのまま解体廃棄物と一緒に運ぶのではなく、廃棄物の区分を判断し、所有者等による適切な処理を経てから解体工事を進める必要があります。





事務所横に1台分の駐車場をご用意しております。
行政書士 佐藤勇太
