
解体工事や設備撤去で発生した鉄や銅、工場で生じた金属の端材などを、スクラップ業者へ売却している事業者は少なくありません。このような場合、「処分費を支払うのではなく買い取ってもらっているのだから、産業廃棄物ではない」と考えることがあります。
しかし、金銭を受け取って売却しているという事実だけで、有価物と判断されるわけではありません。廃棄物に該当するかどうかは、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思などから総合的に判断されます。
特に注意したいのが、売却代金より運搬費の方が高くなる場合です。この記事では、有価物として取引される金属と産業廃棄物の金属くずがどのように区別されるのか、環境省の通知をもとに説明します。
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売却できる金属でも廃棄物になることがある
解体工事で取り外した鉄骨や配管、設備撤去で生じた銅線、工場で発生した金属の端材などには、再生資源として価格が付くことがあります。スクラップ業者へ持ち込むと、重量や金属の種類、相場に応じて買取代金が支払われることも一般的です。
このため、「売却できる物は有価物、処分費を支払う物は廃棄物」と区別したくなるところです。しかし、本来、廃棄物に該当するかどうかの判断は、売買代金の有無だけで決まるものではありません。
事業活動に伴って生じた金属が廃棄物に該当すれば、産業廃棄物の「金属くず」として扱われます。一方、廃棄物に該当せず、通常の商品や再生原料として取引されている金属は、産業廃棄物の金属くずには該当しません。
スクラップ業者から買取伝票を受け取っていることや、売却代金が入金されていることは判断材料になりますが、それだけでは足りません。金属の状態や排出方法、市場での取扱い、実際の取引内容まで検討する必要があります。
廃棄物と有価物は5つの要素から判断する
環境省の「行政処分の指針について」では、廃棄物に該当するかどうかについて、次の要素を総合的に勘案して判断する考え方が示されています。
| 判断要素 | 金属スクラップで検討する内容 |
|---|---|
| 物の性状 | 再生原料として利用できる品質・性状で、生活環境の保全上の支障が生じるおそれがないか |
| 排出の状況 | 需要に沿って排出され、排出前や排出時に適切な保管や品質管理が行われているか |
| 通常の取扱い形態 | 同種の金属について通常の商品としての市場が形成されているか |
| 取引価値の有無 | 有償譲渡され、処理料金相当の負担がなく、運送費等を含めても経済的合理性があるか |
| 占有者の意思 | 客観的な状況から適切に利用・売却する意思が認められるか |
これらは、1つの要素だけで結論を出すための基準ではありません。物の種類や取引の実態に応じて、各要素を総合して判断します。
金属スクラップの場合、鉄や銅などについて再生原料としての市場が存在し、他の取引先を含めて継続的な有償譲渡の実績があることは、有価物と判断する方向の重要な事情になります。
例えば、再生原料として利用できる鉄くずをスクラップ業者が通常の相場で継続的に買い取り、排出側が処理料金に相当する金銭を負担していない場合には、有価物と判断する方向の事情がそろいやすくなります。
売却代金より運搬費が高い場合はどうなるのか
金属スクラップの取引で特に注意したいのが、売却代金と運搬費の関係です。
例えば、工事で発生した金属をスクラップ業者へ5万円で売却する一方、そこまで運ぶための運搬費10万円を排出側が負担するとします。金属自体には5万円の価格が付いていますが、排出側は取引全体では5万円を負担しています。
このように、売却代金より輸送費などの負担が大きくなる取引は、いわゆる「逆有償」と呼ばれます。
ただし、売却代金より運搬費が高いという事情だけで、その金属が産業廃棄物になるわけではありません。運搬費の負担関係は、先ほど説明した「取引価値の有無」を判断する際の事情の1つです。
そこで、この金属について5つの判断要素を総合し、排出時点では産業廃棄物と判断された場合を考えてみます。
平成17年3月25日付け環廃産発第050325002号通知(平成25年3月29日付け環廃産発第13032911号により改正)の第四「『廃棄物』か否か判断する際の輸送費の取扱い等の明確化」では、このような場合の考え方が示されています。
この取扱いは、逆有償となった物を一律に産業廃棄物とするものではなく、排出時点ですでに産業廃棄物と判断された物を再生利用等のために有償譲渡する場合について示されたものです。
運搬中と引渡し後では取扱いが異なる
排出時点で産業廃棄物と判断された金属について、排出側が輸送費を負担し、その金額が売却代金を上回る場合には、買受人が占有者となるまで廃棄物処理法の規制が適用されます。
一方、再生利用のために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については、廃棄物に該当しないと判断できる場合があります。
この判断では、買受人による再生利用が製造事業として確立・継続しており、売却実績のある製品の原材料として利用されることや、その譲渡先を選んだことに合理的な理由があることなども考慮されます。
したがって、解体現場などで発生した金属についてスクラップ業者から買取価格が提示されていても、「売却する物だから排出場所を出た時点から有価物として運搬できる」とは限りません。
廃棄物に該当するかどうかは、廃棄物処理法の規制対象となる行為ごとに、その行為へ着手する時点の客観的な状況から判断する必要があります。
くず鉄の専ら物と有価物は異なる
金属スクラップでは、「専ら物」と「有価物」の違いも重要です。
昭和46年10月16日付け厚生省環境衛生局長通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」では、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物として、古紙、くず鉄(古銅等を含む。)、あきびん類、古繊維が示されています。
有価物、通常の金属くず、専ら物に該当するくず鉄の違いは次のとおりです。
| 区分 | 廃棄物該当性 | 産業廃棄物としての位置付け | 処理業許可 |
|---|---|---|---|
| 有価物として取引される金属 | 廃棄物に該当しない | 金属くずには該当しない | 廃棄物処理法上の処理業許可の対象外 |
| 廃棄物である金属くず | 廃棄物 | 産業廃棄物の金属くず | 他人の物を業として収集運搬・処分する場合は原則として許可が必要 |
| 専ら物に該当するくず鉄 | 廃棄物 | 事業活動に伴って生じたものであれば産業廃棄物 | 専ら再生利用を目的とする収集運搬・処分について許可の例外がある |
専ら物は、価値があるため廃棄物ではないという制度ではありません。環境省も「専ら再生利用の目的となる廃棄物は、有価物ではありません」と明確にしています。
つまり、有価物として取引される金属は廃棄物ではないのに対し、専ら物に該当するくず鉄は廃棄物です。そのうえで、再生利用を前提として処理業許可などに特例が設けられています。
なお、専ら物については処理業許可だけでなく、処理の委託や産業廃棄物管理票についても特例があります。ただし、専ら物に該当する物であっても、実際には再生利用されないと認められる場合には、処理業の許可が必要です。
また、金属スクラップであればすべて専ら物になるわけではありません。「くず鉄」に該当するかどうかも含め、実際の物の性状や取扱いに応じて判断する必要があります。
金属スクラップは取引の実態から判断する
解体業者や建設業者などが金属スクラップを売却する場合、「いくらで買い取られたか」は重要な判断材料です。しかし、買取価格が付いていることだけで有価物と判断することはできません。
再生原料として利用できる状態で排出され、通常の市場で継続的に売却され、排出側が処理料金に相当する負担をしていない場合には、有価物と判断する方向の事情がそろいます。
一方、形式上は買取価格が設定されていても、排出側がそれを上回る運搬費を負担している場合には、その事情も含めて廃棄物該当性を検討する必要があります。排出時点で産業廃棄物と判断される場合には、再生利用事業者へ引き渡すまでの運搬にも注意が必要です。
また、廃棄物に該当するくず鉄が再生利用される場合には、有価物ではなく、専ら物としての取扱いが問題となることがあります。
金属スクラップが有価物なのか、産業廃棄物の金属くずなのかは、その名称や買取伝票の有無だけでは決まりません。金属の性状、排出の状況、市場での取扱い、売却価格、運搬費の負担関係など、その取引の客観的な実態から判断する必要があります。




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行政書士 佐藤勇太
