実務経験で建設業許可を取るコツを行政書士が解説

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建設業許可を取得しようとご検討される際、経営体制(常勤役員等)の要件と並んで大切になるのが、営業所ごとに一定の技術力を持った人材を配置することです。なぜなら、これが建設業法に定められている「営業所技術者」の要件だからです。

一般的にこの要件は、1級や2級の施工管理技士といった国家資格を持っていないとクリアできないと思われがちです。しかしながら、法律上は資格を持っていなくても、過去の施工実績である「実務経験」を積み上げることで、適法に許可を取得することが認められています。

「自社には資格を持った職人はいないが、10年以上現場で実直に積み上げてきた実績ならある」という経営者の方にとって、この実務経験ルートは非常に心強い選択肢となります。

ただし、実務の現場においては、単に「10年やってきた」という自己申告だけでは手続きを進めることができません。なぜなら、長期間にわたる過去の状況を、客観的な書類によって証明していく必要があるからです。

この記事では、実務経験による営業所技術者要件のクリア方法から、福島県における書類確認ルール、そして審査をスムーズに進めるための具体的なポイントまで、丁寧に解説します。

営業所技術者の実務経験要件と「短縮ルール」

まず、この記事で解説する技術者の正確な位置づけと、法律が求める経験年数のルールについて確認しておきましょう。

インターネット上の記事などでは、現在でも「専任技術者(専技:せんぎ)」という言葉が多く使われています。しかし、令和6年12月の建設業法改正に伴い、申請書類(様式第8号)の名称は「営業所技術者等証明書」へと変更されました。

そのため、現在の実務や行政の窓口においては、法的な事実に則って「営業所技術者」や「特定営業所技術者」と呼ぶのが正確な表現となっています。

では、この営業所技術者として実務経験で認められるための期間は、どのように決まるのでしょうか。実は、その方の最終学歴や「最新の保有資格」によって、以下のように細かく分類されています。

資格なし・学歴不問の場合

まず、許可を取得しようとする特定の業種(大工工事、内装仕上工事、解体工事など)に関する実務経験が、通算で10年以上あることが原則として求められます。

指定学科の学校を卒業している場合

一方、建築や土木といった、申請する業種に対応する「指定学科」の高校を卒業している場合は、必要な実務経験の期間が5年以上に短縮されます。

さらに、同じく指定学科の大学や高等専門学校を卒業している場合であれば、必要な実務経験の期間はいっそう短い3年以上にまで短縮されます。

【最新の緩和ルール】施工管理「技士補」の資格を持っている場合

加えて、2023年(令和5年)7月の法改正により、施工管理技士の「第一次検定(一次試験)」に合格した段階である『施工管理技士補』の資格を取得していれば、学歴に関わらず実務経験の大幅な短縮が認められるようになりました。

具体的には、「1級施工管理技士補」であれば大学指定学科卒と同じ扱いとなり、合格後3年以上の実務経験で営業所技術者になれます。

同様に、「2級施工管理技士補」であれば高校指定学科卒と同じ扱いとなるため、合格後5年以上の実務経験で要件を満たすことが可能です。

ただし、この技士補による短縮ルールには適用除外があります。すなわち、土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の「指定建設業」7業種、および電気通信工事業については対象外となり、これらの業種では従来どおり1級(2次検定合格)などの国家資格者の配置が必要です。

もっとも、解体工事はこの7業種には含まれないため、本記事でこれから解説するケースには影響しません。

このように、完全な無資格から10年を待つ方法だけでなく、途中で一次試験(技士補)に合格することで、必要年数を一気に「3年」や「5年」へ短縮させる道が開かれています。ただし、実務経験による証明においては「期間の重複」が原則として認められません。

したがって、1人の人間が同じ10年間の経験を使って2つの業種の営業所技術者を同時に兼任することはできないという事実があります。つまり、もし2業種をどちらも資格なしで取得しようとすれば、基本的には20年分の実務経験が必要になるという実務上のルールが存在するのです。

過去の経歴の「証明方法」による違いと福島県の確認ルール

条件となる年数を満たしていることが分かったら、次はそれを役所に証明するための書類集めに入ります。ここで重要となるのは、その実務経験が「自社や自分自身で証明するもの(自社証明・自己証明)」なのか、あるいは「他社に証明してもらうもの(他社証明)」なのかという軸で整理することです。

なぜなら、役所は「その証明にどれだけの客観的な信用性があるか」という視点で確認書類を審査しているからです。そのため、実務上の手続きの流れに応じて、申請ルートは以下の3つのケースにすっきりと分類されます。

ケースA:許可ありの自社証明(自社が過去に許可を持っていた場合)

まず、すでに建設業許可を持っている現在の自社での実績を、自社で証明するケースです。

主な確認書類:
過去の「建設業許可通知書の写し」や、毎年役所に提出していた「決算変更届(工事経歴書などが綴じられたもの)」の控え(必要年数分)、および役員や従業員としての在籍裏付けとなる「履歴事項全部証明書」などのご用意が必要です。

実務上のポイント:
過去の「許可通知書」や毎年の「決算変更届」の提出自体は必ず必要となりますが、公的な決算変更届がすでに役所に提出されているため、個別の工事請負契約書や請求書、通帳のコピーといった膨大な工事履歴を改めて添付する必要はありません。したがって、3つのケースの中で最もスムーズに進むケースといえます。

 ケースB:他社証明(前職の会社から「実務経験証明書」をもらう場合)

次に、過去に他の会社に勤めていた期間の実務経験を、その会社の代表者に証明してもらうケースです。

実務上のポイント:
自分以外の第三者(前の会社)が責任を持って書面に代表者印を押して証明するため、役所からは「客観的な信用性が高い」と見なされます。

福島県の特例ルール:
そのため、福島県での申請においては、前職の会社から正式に「実務経験証明書」を書いてもらうことができれば、その会社が許可を持っていなかったとしても、その期間の具体的な工事履歴(何年分もの請求書や通帳のコピーなど)を提出する必要がなくなります。

したがって、前職の会社と良好な関係が保たれており、書類へのご協力をいただけるのであれば、これが非常に負担の少ない近道になります。

ケースC:許可なしの自社・自己証明(許可がない状態の自社、または独立していた個人事業主時代)

最後に、許可を持っていない状態の自社での期間や、独立していた個人事業主(一人親方)時代の期間の実務経験を、自分自身で証明するケースです。

実務上のポイント:
許可がない状態での自己証明は、役所側で事前に確認できる公的データがないため、客観的な裏付けをより丁寧に確認されることになります。したがって、福島県の審査においても、最も慎重に書類を精査されるのがこのケースです。

必要となる確認書類:
だからこそ、このケースでは当時の「工事請負契約書」「注文書」「請求書」の原本に加え、それに対応する「銀行口座の通帳原本(実際の入金履歴)」をセットでご用意いただき、客観的な事実を地道に積み上げて証明していく必要があります。

実務経験証明の書類審査を通すための4つのポイント

先ほどの「ケースC」のように、自力で大量の工事履歴を出して実務経験を証明しなければならない場合、書類の準備において非常に緻密な精査が求められるポイントがあります。そこで、一度の申請でスムーズに審査をクリアするためには、あらかじめ以下の点について丁寧な確認を行っておく必要があります。

ポイント①:120枚に及ぶ請求書の精査と「使える書類」の選別

10年の実務経験を証明するということは、基本的には120ヶ月分に及ぶ膨大な期間の施工実績を裏付けていく作業になります。

実務上の注意点:
ただし、単に「古い請求書が120枚以上残っているから大丈夫」というわけではありません。お預かりした書類を1枚ずつ丁寧に拝見していくと、中には「業種がはっきりと特定できないもの」や、「諸事情により行政の表に出す書類としては適さないもの」がどうしても含まれていることがあります。

したがって、これらをそのまま提出するのではなく、公的な証明として真に有効な書類だけをプロの目で厳しく選別し、組み立てていく必要があります。この「使える書類の精査」こそが、実務経験証明において最も時間と根気を要するパートです。

ポイント②:請求書や契約書の「工事名・記載内容」を確認

前述の書類選別において、最も大切になるのが書類の「中身(記載内容)」です。なぜなら、役所が確認しているのは単なる建設業の経験ではなく、「許可を取ろうとする特定の業種の経験」だからです。

実務上の注意点:
例えば、「解体工事」の許可を取りたい場合において、手元の請求書の件名がすべて「工事一式」や「現場応援」「人工代(応援代)」としか書かれていない場合、行政の審査において「これでは何の業種を施工したのか客観的に確認できない」として、実績期間として認められないケースがあります。

したがって、請求書の品名や件名に「〇〇邸解体工事」「〇〇ビル内装仕上工事」のように、その業種であることが一目で伝わる具体的な記載があるかを事前に確認しておく必要があります。

ポイント③:振込手数料などによる金額のズレの明確化

実際の取引においては、請求書の金額と、通帳に印字されている金額が完全に一致しないケースが多々あります。

実務上の注意点:
よくあるのが、取引先が「振込手数料」を差し引いて送金してきたケースや、材料費などが相殺されて入金されているケースです。もっとも、こうした実務上のズレがあっても、それだけで実績が否定されるわけではありません。

大切なのは、作成する一覧表(突合表)の中で「請求額」と「実際の入金額」を並べて記載し、手数料引きなどの理由が行政側に一目で伝わるように整理しておくことです。これによって、担当者も迷うことなくスムーズに内容を納得してくれます。なお、当事務所にご依頼いただいた際も、もちろんこの突合表をこちらで丁寧に作成いたします。

ポイント④:健康保険証廃止に伴う最新の「在籍(常勤)証明」

営業所技術者は、その営業所に「常勤」して専任で業務を行わなければなりません。

現在の確認方法:
しかし、従来の紙やプラスチックの健康保険証はすでに新規発行が終了(廃止)となっており、現在の役所の窓口では、常勤性の確認書類として保険証の写しは原則使用できなくなっています。

そのため、現在は「住民税の特別徴収税額決定通知書(会社側・本人側の控え)」や、法人の確定申告書にある「役員報酬の明細(内訳書)」、「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」などを活用して、現在および過去の在籍・常勤の事実を裏付けるのが最新の実務となっています。

書類が足りない・期間に満たない場合の適法な2つの対処法

「過去の書類を一生懸命探したが、途中の数年分の請求書や通帳が見当たらず、どうしても期間が繋がらない」「あと少しだけ年数が足りない」という状況に直面することも珍しくありません。しかしながら、そのような場合でも、実務上の適切なアプローチによって解決できる道があります。

対処法①:長い実務経験を待つより「国家資格」の取得を目指す

もし手元に客観的な書類が残っておらず、実務経験の証明が難しい状況であれば、証明書類集めに時間を費やすのをやめ、社員やご自身が「国家資格」や、先ほど解説した「第1次検定(技士補)」の取得を短期集中で目指すアプローチへ切り替える方が、結果として格段に早く許可を取れるケースがあります。

具体的なメリット:
例えば、2級施工管理技士などの資格であれば、最終試験に合格した時点で「実務経験10年」の証明が合格証書1枚だけで完了します。さらに、最新の緩和ルールを使えば、1次試験の合格(技士補)だけでも必要期間が3〜5年に短縮されるため、長年の書類を集める事務負担や、確認の手間を大幅に減らすことができます。

加えて、資格であれば1つの資格で複数業種の要件を同時に満たせるケースが多い一方、実務経験10年による証明はあくまで1業種ごとの証明にとどまるため、複数業種の許可を目指す場合は資格取得の方が効率的です。

 対処法②:経験のある「有資格者」や「ベテランの技術者」を雇用する

一方、自社の中に書類で証明できる人がいないのであれば、すでに必要な国家資格を持っている人材や、過去の許可業者での実務経験を書類で綺麗に証明できるベテランの技術者を、外部から正社員(常勤の従業員)として新しく直接雇用する方法もあります。

実務上の注意点:
その方を自社の社会保険に加入させ、自社の営業所にフルタイムで常勤させることで、会社全体の技術的要件を適法にクリアすることができます。当然ですが、実際に自社の技術スタッフとして業務に従事してもらう必要があります。

実務経験での建設業許可取得をお考えの方へ

建設業許可における営業所技術者(旧・専任技術者)の実務経験による立証は、集めるべき書類の緻密さにおいて、許可申請の手続きの中で最も丁寧な準備を要するパートです。

これまでお話ししてきました通り、特に「許可を持たない状態での10年証明(ケースC)」においては、120ヶ月に及ぶ膨大な書類の束を前にして、使える書類と使えない書類を1枚ずつ見極め、振込手数料による数えきれないほどの金額のズレを通帳の印字と突き合わせていくという、非常に緻密な作業が必要となります。

そのため、実務上、この実務経験ルートによる申請は、国家資格等の資格証書が1枚ある場合の通常の申請に比べて、実に2倍から3倍以上の時間と労力がかかります。したがって、大変恐縮ではございますが、当事務所におけるサポート報酬額についても、通常の申請より高く設定をさせていただいております。

これは、社長に過度な事務負担をかけることなく、行政側が一度で納得するだけの緻密な『突合表』の組み立てと書類の選別を、私どもがプロとして責任を持って遂行するための正当な対価としてご理解いただけますと幸いです。

他社証明の信用性を活かせるかどうかの見極めや、書類の文言に潜む工事名記載の確認を含め、当事務所にご依頼いただいた際は、社長には手元にある過去の資料を集めていただくだけで、複雑な書類一式をこちらですべて丁寧に組み立てて申請いたします。

したがって、「実務経験で許可が取れるか一度書類を見てほしい」「過去の書類が不完全で、どう進めればいいか分からない」という方は、大切な仕事のチャンスを逃してしまう前に、ぜひ一度お気軽にご相談ください。スムーズな許可取得をサポートいたします。

福島県で建設業許可を取りたいとお考えの方へ

 

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