
「社長から子どもへ会社を引き継ぐことになった」「代表取締役が退任するため、新しい役員を選任した」。このような場合、新しい代表取締役を登記すれば、建設業許可もそのまま維持できるとは限りません。
小規模な建設会社では、代表取締役である社長自身が、常勤役員等、いわゆる「経管」を務めていることが多くあります。社長が退任するときは、後任者が経管の要件を満たすかを事前に確認し、建設業許可の変更届も行う必要があります。
この記事では、経管を交代するときに確認すべきこと、将来の交代に備えて準備しておきたいこと、福島県での必要書類について解説します。
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経管の交代は役員変更だけでは終わらない
法人が建設業許可を維持するためには、常勤役員のうち一定の経営経験を持つ人を置くなど、建設業の経営を適正に行うための体制を備えていなければなりません。この常勤役員を、法令では「常勤役員等」といいますが、実務では現在も「経管」と呼ばれています。
代表取締役を交代しても、新しい代表取締役が当然に経管になれるわけではありません。会社法上の代表者として選任されることと、建設業許可上の経営経験を満たすことは別の問題だからです。
そのため、代表者や役員の人事を決めるときは、役員変更登記だけでなく、建設業許可上の経管を誰にするかも同時に検討する必要があります。
※常勤役員等」(経管)の詳しい要件については、建設業許可の経管(常勤役員等)の要件と証明方法を解説 の記事をご確認ください。
後任候補者の経歴によって確認内容が変わる
後任者が経管になれるかどうかは、現在の役職名だけでは判断できません。どの会社で、どのような立場にあり、建設業に関する経営経験を何年間積んできたかを確認します。
すでに自社の取締役となっている場合
社長の子どもや他の取締役が、すでに役員として建設業の経営に関わっている場合です。一般的な要件では、建設業に関して5年以上、取締役などとして経営業務を管理した経験があるかを確認します。
取締役としての在任期間だけでなく、その期間に会社が建設業を営んでいたことも資料によって確認されます。
従業員を新たに取締役へ就任させる場合
会社で長く働いている人であっても、従業員として勤務した期間が、そのまま通常の取締役としての経営経験になるわけではありません。
例えば、社長の子どもが10年間従業員として勤務していても、社長が退任する直前に取締役へ就任させた場合、通常の5年以上の役員経験は満たしていません。
将来会社を継ぐ予定の人がいる場合は、早めに取締役へ就任させ、実際に建設業の経営に関わる経験を積ませることが重要です。
他社で役員をしていた人を迎える場合
他の建設会社で取締役などを務めていた人を、後任者として迎える方法もあります。他社での役員経験を利用できる可能性がありますが、以前の会社における役員期間と建設業の営業期間を確認できる資料が必要です。
過去の登記事項証明書だけでは、その会社が当時建設業を営んでいたことまでは確認できません。過去の許可通知書、決算変更届、工事請負契約書などを取得できるか、事前に確認する必要があります。
通常の役員経験で要件を満たさない場合でも、執行役員等として経営業務を管理した経験や、経営業務を補佐した経験などが認められる場合があります。ただし、これらは通常の取締役経験とは必要資料が異なり、許可行政庁による個別の確認が必要です。
前任者が退任する前に後任者を確認する
経管は建設業許可を維持するための要件です。前任者が退任してから後任者を探すのではなく、退任前に後任候補者の経歴と確認資料を調べておかなければなりません。
後任者が要件を満たさないまま前任者が退任すると、会社は建設業許可の要件を欠くことになります。経管の変更届を提出すれば、誰でも後任者として認められるわけではありません。
福島県も、経営管理体制に係る常勤役員等を欠いた場合は許可の要件を欠くことになり、代わる人がいる場合には常勤役員等の変更届を行うものと案内しています。(福島県公式ウェブサイト)
前任者が急に亡くなった場合や、病気によって職務を続けられなくなった場合も同様です。後任者がすでに要件を満たしていれば変更手続を進められますが、該当する人がいなければ許可の維持に関わる問題となります。
社長だけが経管の会社は後継者を早めに育てる
小規模な建設会社では、社長だけが経管の要件を満たし、他の役員には必要な経験がないことがあります。この状態が続くと、社長の引退、死亡、病気などが、そのまま建設業許可の問題につながります。
子どもなど将来の後継者が会社で働いている場合は、適切な時期に取締役へ就任させ、経営経験を積ませることも検討する必要があります。一般的な5年の役員経験は、交代が決まってから短期間で準備できるものではありません。
新規許可や更新申請では、役員等の一覧表に常勤・非常勤の別を記載します。後継者候補が実際に常勤の取締役として勤務している場合は、その実態に合わせて「常勤」と記載しておくことが必要です。
また、役員報酬の支払状況、社会保険関係書類、住民税の特別徴収関係書類、出勤簿など、常勤で勤務していることを確認できる資料も継続して保存しておくとよいでしょう。
これらは通常の役員について毎回提出する書類ではありません。しかし、将来その人を経管へ変更するときに、常勤性を確認する資料として必要になる可能性があります。
福島県では変更後2週間以内に届け出る
福島県知事許可で経管を変更した場合は、変更後2週間以内に、主たる営業所の所在地を管轄する建設事務所へ変更届を提出します。福島県では、書類は原則として郵送で提出します。
建設事務所へ書類を持参しても、その場で内容を確認してもらえるわけではありません。後任者の要件や必要書類に不明な点がある場合は、前任者の退任日や後任者の就任日を決める前に、管轄の建設事務所へ相談しておくことが重要です。
管轄する建設事務所や郵送方法については、福島県の「既に建設業の許可を受けている方へ」および最新の建設業許可申請の手引をご確認ください。
福島県の建設業許可申請の手引では、経管を変更する際の主な提出書類として、次のものが示されています。
- 変更届出書
- 常勤役員等証明書
- 役員等の一覧表
- 常勤役員等の略歴書
- 経営経験と現在の常勤性を確認する資料
必要書類は、後任者が既存の役員か新任の役員か、どのような経営経験によって要件を満たすかによって異なります。
後任者が新たに取締役へ就任する場合は、経管の変更だけでなく、役員変更登記と、建設業許可上の法人役員変更届も必要です。それぞれの期限は、次のように異なります。
| 手続 | 期限 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 経管の変更届 | 変更後2週間以内 | 役員変更登記の完了を待って期限を過ぎないようにします。 |
| 役員変更登記 | 就任後、原則2週間以内に申請 | 後任者の就任前に登記申請をすることはできません。 |
| 建設業許可上の法人役員変更届 | 変更後30日以内 | 登記完了後に取得した法人の登記事項証明書を添付します。 |
株式会社の役員変更登記は、登記の事由が生じてから2週間以内に申請する必要があります。新任取締役の場合、登記の事由が生じるのは、その人が就任を承諾して取締役に就任した時点です。したがって、後任者の就任日より前に役員変更登記を申請することはできません。
就任日以後に登記を申請しても、登記が完了して登記事項証明書を取得できるまでには日数を要することがあります。登記完了を待ってから経管の変更届と法人役員変更届をまとめて提出しようとすると、経管変更届の2週間という期限を過ぎるおそれがあります。
そのため、新任役員を経管とする場合は、2週間以内の経管変更届を先に進め、登記完了後に法人の登記事項証明書を取得し、30日以内に法人役員変更届を提出するという切り分けが必要です。
経管変更届と役員変更登記を並行して進めることになるため、前任者の退任日と後任者の就任日を決める段階で、管轄の建設事務所へ提出時期や必要書類を確認しておくと確実です。
経営経験を確認する資料
一般的な5年以上の取締役経験によって経管の要件を満たす場合、福島県では、役員としての地位と期間、その期間に建設業を営んでいたことをそれぞれ確認します。
| 確認する内容 | 主な確認資料 | 確認時の注意点 |
|---|---|---|
| 取締役などの役職と在任期間 | 登記事項証明書または閉鎖した役員欄の謄本 | 現在の登記事項証明書だけで必要な期間を確認できない場合は、過去の閉鎖事項証明書なども必要です。 |
| 許可業者で役員をしていた期間 | 建設業許可通知書の写し | 経験として証明する期間分を用意します。他社の経験を利用する場合は、以前の会社から資料を取得できるか確認します。 |
| 許可業者として建設業を営んでいた期間 | 決算変更届の表紙と直前3年の各事業年度における工事施工金額の写し | 受付印のあるものを、証明する期間分用意します。 |
| 工事の請負実績 | 工事請負契約書、または発注書と工事請書のセット | 発注書と工事請書は一方だけでは足りません。証明する期間について、通年分の資料が必要です。 |
| 契約書などが残っていない場合 | 工事内容、工期、相手方が分かる書類と、相手方からの入金額が分かる書類 | 2種類の資料を組み合わせて提出します。疑義がある場合は追加資料を求められることがあります。 |
| 個人事業主としての経験 | 所得税確定申告書と市町村が発行する営業証明書 | 個人事業として建設業を営んでいた期間分を用意します。 |
複数の資料を組み合わせて必要な経験年数を証明することもできます。一方、必要な期間の資料が残っていない場合は、経営経験そのものがあっても、届出の際に証明できないことがあります。
執行役員等としての経験や、経営業務を補佐した経験によって要件を満たす場合は、組織図、業務分掌規程、人事発令書など、別の資料が必要になります。この場合は、届出前に管轄の建設事務所へ相談した方がよいでしょう。
現在の常勤性を確認する資料
後任者には、過去の経営経験だけでなく、変更後にその会社へ常勤していることも求められます。
福島県では、法人の常勤役員等について、次の表の上位にある資料から順に確認する取扱いとなっています。
| 優先順位 | 常勤性を確認する資料 | 確認時の注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の写し | 後任者が申請会社の社会保険へ加入していることを確認します。 |
| 2 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得確認及び報酬決定通知書の写し | 新たに社会保険へ加入し、標準報酬決定通知書がまだない場合などに使用します。 |
| 3 | 住民税特別徴収義務者及び税額通知の写しと直近の領収書 | 会社が給与や役員報酬から住民税を特別徴収していることを確認します。 |
| 4 | 法人税確定申告書と役員報酬手当等及び人件費の内訳書の写し | 後任者に役員報酬が支払われていることを確認できるものが必要です。 |
| 5 | 住民票等、賃金台帳・出勤簿等、源泉徴収票・確定申告書 | 上位の資料で確認できない場合に、これら3種類を組み合わせて提出します。 |
最後の方法を利用する場合は、住民票または運転免許証の写し、賃金台帳や出勤簿など常勤性を確認できる資料、源泉徴収票と確定申告書の写しをすべて用意します。
住所と実際の居住地が異なる場合や、社会保険に加入していない事情がある場合は、追加資料を求められることがあります。出向者を経管とする場合も別の確認が必要です。
経管の交代手続は当事務所へご相談ください
常勤役員等の変更では、後任者の経歴だけでなく、その経験を福島県が求める資料によって確認できるかが重要です。後任者が新たに取締役へ就任する場合は、役員変更登記や建設業許可上の役員変更もあわせて進める必要があります。
当事務所では、後任候補者が経管の要件を満たすかを確認するだけでなく、経営経験と常勤性を証明する資料の確認、変更届の作成・提出、建設事務所から補正を求められた場合の対応まで行っています。
代表者や役員の交代を予定している場合は、退任日や就任日を確定する前にご相談ください。役員変更を終えた後に後任者が要件を満たさないことが判明すると、建設業許可の維持に影響するおそれがあります。
役員人事を検討する段階で経管の要件と必要資料を確認しておけば、交代の日程を調整し、不足する資料にも早めに対応できます。経管の交代を滞りなく進めるため、後任者が決まった段階で当事務所へお問い合わせください。




事務所横に1台分の駐車場をご用意しております。
行政書士 佐藤勇太
