
建設工事で産業廃棄物の処理を委託する場合、原則として排出事業者である元請業者がマニフェストを交付し、運搬・処分の終了まで管理しなければなりません。建設工事では、実際に廃棄物を発生させる作業を下請業者が行った場合でも、元請業者が排出事業者となります。
紙マニフェストを交付した場合は、前年度の交付状況を毎年6月30日までに行政へ報告する必要があります。一方、電子マニフェスト利用分については、事業者自身が交付等状況報告を行う必要はありません。
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マニフェストは産廃の処理を管理するための制度
マニフェスト制度は、産業廃棄物の処理を委託した排出事業者が、その後の処理状況を把握して適正処理を確保するための制度であり、排出事業者責任を確実に果たすための仕組みの1つです。
マニフェストの正式名称は「産業廃棄物管理票」です。産業廃棄物の処理を他人に委託する場合、排出事業者はマニフェストを交付し、委託したとおりに運搬や処分が行われたことを把握する必要があります。
したがって、産業廃棄物を処理業者へ引き渡した時点で、排出事業者の対応が終わるわけではありません。処理終了後に返送されるマニフェストの写しによって、委託した産業廃棄物の処理状況を追跡する仕組みになっています。
委託契約書とマニフェストはそれぞれ必要になる
産業廃棄物の収集運搬や処分を委託するときは、法令で定められた委託基準に従い、書面による委託契約を締結しなければなりません。
委託契約は、誰にどのような処理を委託するのかを事前に定めるものです。一方、マニフェストは、実際に産業廃棄物を引き渡す際に交付し、その後の処理状況を管理するものです。
環境省も、委託基準に基づく契約とマニフェストに関する義務は、それぞれ必要になると示しています。
マニフェストは産業廃棄物の種類ごとに交付する
マニフェストは、原則として産業廃棄物の種類ごとに交付しなければなりません。例えば、現場でがれき類と木くずを分別して排出している場合には、それぞれについてマニフェストが必要です。
また、1台の車両で運搬する場合でも、運搬先が複数であれば運搬先ごとに交付しなければなりません。ただし、発生段階から複数の産業廃棄物が一体不可分の状態で混合している場合は、1つの種類として交付できる場合があります。
建設工事では元請業者がマニフェストを交付する
建設工事に伴って生じる廃棄物については、発注者から直接工事を請け負った元請業者が原則として排出事業者となります。そのため、下請業者が施工した部分から廃棄物が発生した場合でも、元請業者が排出事業者として処理責任を負います。
そのため、建設廃棄物の処理を委託するときは、元請業者が処理業者を選定して委託契約を締結し、マニフェストを使用して処理状況を管理する必要があります。
下請業者が運搬する場合も元請業者が交付する
下請業者へ産業廃棄物の運搬を委託する場合、その下請業者には原則として産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
この場合、実際に廃棄物を運搬するのは下請業者ですが、排出事業者は元請業者です。そのため、元請業者から運搬を受託した下請業者へマニフェストを交付しなければなりません。
要するに、誰が廃棄物を運搬するかと、誰が排出事業者としてマニフェストを交付するかは、分けて考える必要があるということです。
元請業者が自社で運搬する場合
元請業者が自社の工事から発生した産業廃棄物を自ら運搬するだけであれば、他人から産業廃棄物の運搬を受託することにはなりません。また、その産業廃棄物を自社で処理する場合には、他人への処理委託がないため、マニフェストの交付義務はありません。
一方、自社で処分施設まで運搬した後、その処分を他人に委託する場合には、処分業者へ引き渡す際にマニフェストを交付する必要があります。
マニフェストで運搬・処分の終了を把握する
紙マニフェストを交付した後は、処理業者から返送される写しによって、産業廃棄物が委託内容に従って処理されたことを把握する必要があります。
一般的な紙マニフェストでは、排出事業者がA票を控えとして保管し、その後、運搬終了を示すB2票、処分終了を示すD票、最終処分終了を示すE票が戻ってきます。
出典:環境省「産業廃棄物のマニフェスト制度の概要・業務フロー図」より
最終処分まで終了したことを把握する
中間処理施設へ産業廃棄物を搬入した場合、中間処理が終了しただけではマニフェストによる管理は完了しません。
中間処理後に生じた廃棄物について最終処分が終了すると、その情報が排出事業者へ伝えられます。排出事業者はE票によって、中間処理後に生じた廃棄物も含めて、委託した産業廃棄物の最終処分が終了したことを把握する必要があります。
紙マニフェストは5年間保存する
排出事業者が交付したマニフェストの写しは、交付した日から5年間保存しなければなりません。また、運搬業者や処分業者から返送された写しについては、送付を受けた日から5年間の保存が必要です。
建設工事が終了した後も保存期間は続きます。工事ごとのマニフェストを保存期間中に取り出せるよう、社内で管理方法を決めておく必要があります。
マニフェストが期限までに戻らない場合は対応が必要
排出事業者は、マニフェストを交付した後、一定の期限までに運搬や処分が終了したことを把握する必要があります。
通常の産業廃棄物では、運搬終了・処分終了については交付日から90日以内、最終処分終了については180日以内に報告を受けなければなりません。期限内に写しが届かない場合は、そのまま放置することはできません。
| 把握する内容 | 通常の産業廃棄物 | 特別管理産業廃棄物 |
|---|---|---|
| 運搬・処分の終了 | 交付日から90日以内 | 交付日から60日以内 |
| 最終処分の終了 | 交付日から180日以内 | 交付日から180日以内 |
処理状況を把握して必要な措置を講じる
期限までにマニフェストの写しが届かない場合、排出事業者は収集運搬業者や処分業者へ問い合わせるなどして、委託した産業廃棄物の処理状況を速やかに把握しなければなりません。
そのうえで、生活環境の保全上の支障を除去し、または発生を防止するために必要な措置を講じる必要があります。環境省では、委託した産業廃棄物が処分されずに放置されている場合の例として、委託契約を解除して別の処分業者へ委託することなどを示しています。
必要な措置の内容を30日以内に行政へ報告する
期限までにマニフェストの写しが届かなかった場合には、運搬終了・処分終了については90日または60日の期間が経過した日から、最終処分終了については180日の期間が経過した日から、それぞれ30日以内に、講じた措置等の内容を都道府県知事等へ報告しなければなりません。
未返送の場合だけでなく、次の場合も処理状況を把握し、必要な措置を講じる必要があります。
- 必要な事項が記載されていないマニフェストの写しが届いた場合
- 虚偽の記載があるマニフェストの写しが届いた場合
- 運搬業者または処分業者から処理困難通知を受け、処理終了の報告を受けていない場合
記載事項が欠けた写しを受け取った場合はその受領日から、虚偽記載の場合は虚偽の記載があることを知った日から、それぞれ30日以内に報告しなければなりません。
また、運搬業者または処分業者から、受託した産業廃棄物の処理を適正に行うことが困難になった旨の通知(処理困難通知)を受けた場合で、まだ処理終了の報告を受けていないときは、法令で定められた起算日から30日以内に報告する必要があります。
なお、マニフェストを交付しない、必要事項を記載しない、虚偽の記載をするなど、マニフェストに関する一定の違反には、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。
紙マニフェストの交付状況は毎年行政へ報告する
紙マニフェストを交付した排出事業者には、交付時の対応や5年間の保存とは別に、年1回の報告義務があります。
廃棄物処理法第12条の3第7項に基づき、前年度に交付した紙マニフェストについて「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」を作成し、毎年6月30日までに都道府県知事等へ提出しなければなりません。
マニフェストの交付枚数が少なくても報告が必要
交付等状況報告について、年間の交付枚数や産業廃棄物の排出量による下限はありません。前年度に紙マニフェストを交付していれば、交付枚数が少ない事業者も報告する必要があります。
福島県も、交付枚数や排出量の多少にかかわらず、紙マニフェストを交付した排出事業者を報告対象としています。報告書に記入する項目は次のとおりです。
- 排出事業場の名称・所在地
- 事業の業種
- 産業廃棄物の種類
- 排出量
- マニフェストの交付枚数
- 収集運搬業者
- 運搬先
- 処分業者
- 処分場所
福島県では、排出量をt単位で記載するよう案内しています。体積などで管理している場合には、自社で使用している換算係数や処理業者による計量値、環境省作成の換算例などを利用して重量へ換算できます。
建設工事現場はまとめて報告できる場合がある
交付等状況報告書は、原則として排出事業場ごとに作成します。建設工事の場合、この「排出事業場」は建設工事現場として考えることになります。
一方、建設工事現場は工事ごとに所在地が変わります。福島県では、設置期間が短い、または所在地が一定しない複数の建設工事現場について、マニフェストの交付実績を1つの報告書にまとめることも認めています。
この場合は、排出量が最も多い建設工事現場を主たる現場として報告します。
福島県内では建設工事現場によって提出先が異なる
福島県内の建設工事現場については、福島市・郡山市・いわき市を除き、現場所在地を管轄する地方振興局が報告書の提出先です。
たとえば、二本松市や本宮市の建設工事現場は、県北地方振興局環境課が提出先となりますが、福島市の場合は福島市が提出先です。
福島県では、前年度分について毎年度4月1日から6月30日までを受付期間とし、郵送または窓口への持参による提出を案内しています。提出先や報告様式については、福島県「産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付等状況報告制度について」で確認することができます。
電子マニフェスト利用分は交付等状況報告が不要
電子マニフェストでは、排出事業者、収集運搬業者、処分業者が電子情報処理組織を利用し、産業廃棄物の処理状況を登録します。
情報処理センターがデータを管理するため、紙マニフェストのように管理票の写しを5年間保存する必要はなく、処理状況もシステム上で把握できます。
また、電子マニフェストを利用した分については、情報処理センターが都道府県知事等へ報告します。そのため、排出事業者自身が産業廃棄物管理票交付等状況報告書を提出する必要はありません。
ただし、電子マニフェストを導入していても、一部について紙マニフェストを使用している場合には、その紙マニフェスト分について年次報告が必要です。紙と電子を併用している事業者は、紙で交付した分を分けて把握しておく必要があります。
建設業者はマニフェストの交付後も適切に管理する
建設工事では、元請業者が排出事業者としてマニフェストを交付し、運搬・処分の終了まで管理しなければなりません。紙マニフェストを使用している場合には、返送された写しの保存に加えて、毎年6月30日までの交付等状況報告にも対応する必要があります。
また、下請業者として建設廃棄物の収集運搬を受託する場合には、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
当事務所では、産業廃棄物収集運搬業許可の新規申請・更新申請を取り扱っています。許可が必要となるケースや申請の流れ、当事務所のサービスの内容については、「福島県で産業廃棄物収集運搬業の許可を取りたい方へ」をご覧ください。





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行政書士 佐藤勇太
