
経営事項審査の総合評定値P点は、完成工事高、自己資本や利益、経営状況、技術力、社会性等を総合して算出される点数です。公共工事の入札参加資格審査では、建設業者の経営規模や施工能力などを客観的に評価する数値として使用されます。
P点は工事の種類ごとに算出されるため、同じ会社でも土木一式工事、舗装工事、とび土工工事などで点数が異なります。また、公共工事を継続して直接請け負う会社では、有効期間を切らさないため、実務上は毎事業年度の決算後に経審を受けなければなりません。
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経営事項審査は公共工事を直接請け負うために受ける審査
経営事項審査(経審)は、一定の公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者について、経営状況、経営規模、技術力、社会性等を数値によって評価する制度です。
建設業法では、国や地方公共団体などが発注する一定規模以上の公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者に、経営事項審査を受けることを求めています。
経審が必要になる公共工事には金額基準がある
経営事項審査の義務付けから除かれる軽微な工事は、建築一式工事では1件の請負代金が1,500万円未満、その他の建設工事では500万円未満の工事です。この金額は消費税込みで判断します。
なお、物理的・経済的に影響の大きい災害などによって必要となった応急の建設工事も、経審の義務付けの対象外とされています。一方、通常の災害復旧工事は対象となるため、災害に関係する工事が一律に除外されるわけではありません。
公共工事を続ける会社は毎年経審を受ける
経営事項審査には有効期間があり、原則として直前の事業年度終了日である審査基準日から1年7か月です。この1年7か月は、経審の結果通知書を受け取った日から数えるのではありません。
例えば3月31日決算の会社であれば、原則として3月31日が審査基準日となります。申請や結果通知が遅くなっても、前回の審査基準日から数える1年7か月の期間が後ろへ延びるわけではありません。
法律上、すべての建設業者に毎年経審を受けることが義務付けられているわけではありません。しかし、対象となる公共工事を継続して発注者から直接請け負う会社は、有効期間を切らさないため、結果として毎事業年度の決算後に経審を受けることになります。
次回の経審の結果通知が遅れて前回の有効期間が終了すると、新しい結果通知を受けるまで対象となる公共工事を直接請け負うことができない期間が生じます。
また、福島県の工事入札参加資格を取得している会社は、経営事項審査の有効期限が切れると入札参加資格も喪失するため注意が必要です。詳しくは、福島県「工事等入札参加資格の申請」で確認できます。

出典:福島県「経営事項審査申請の手引 1 経営事項審査の概要(令和8年6月版)」
この図では、審査基準日から有効期限日までの1年7か月と、その途中に次の決算日が到来する関係を確認できます。現行の手引は、福島県「経営事項審査申請様式等ダウンロード」から確認できます。
経審は経営状況分析と経営規模等評価に分かれる
さて、経営事項審査では、経営状況を評価する「経営状況分析」と、経営規模や技術力、社会性等を評価する「経営規模等評価」に大別されます。
経営状況分析は国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関が行い、経営規模等評価は建設業許可を行った国土交通大臣または都道府県知事が行います。
福島県知事許可業者の場合には、まず登録経営状況分析機関で経営状況分析を受け、その結果を使って福島県へ経営規模等評価を申請し、総合評定値Pを請求するという順番になります。
経営状況分析ではY点が算出される
経営状況分析では、会社の財務内容を8つの財務指標から分析し、経営状況を表すY点が算出されます。負債抵抗力、収益性・効率性、財務健全性、絶対的力量という4つの分野から評価され、結果は「経営状況分析結果通知書」として通知されます。
福島県知事許可業者であっても、Y点を福島県が算出するわけではありません。なお、Y点が上がる要因や8つの財務指標については、「経営状況分析Y点が上がる要因と下がる要因を行政書士が解説」で詳しく説明しています。
経営規模等評価とP点の請求は福島県へ行う
福島県知事許可業者の場合、経営規模等評価では、完成工事高や自己資本額などを評価するX、技術力を評価するZ、社会性等を評価するWが審査されます。書面で申請する場合の提出先は、主たる営業所の所在地を管轄する建設事務所です。
例えば、福島市、二本松市、本宮市は県北建設事務所、郡山市は県中建設事務所が窓口となります。福島県では、書面申請のほかJCIPによる電子申請にも対応しています。
総合評定値Pは、経営規模等評価で算出されたX・Z・Wと、登録経営状況分析機関が算出したYを組み合わせて計算します。P点は任意の請求となっているため、経営規模等評価を申請しただけでは通知されません。
ただし、実際の手続きでは、経営規模等評価の申請とP点の請求を別々に行う必要はありません。「経営規模等評価申請書・総合評定値請求書(様式第25号の14)」を使用し、通常は同時に行います。P点を請求する場合には、登録経営状況分析機関から交付された経営状況分析結果通知書も必要です。
福島県知事許可業者が決算後にP点の通知を受けるまでの流れは、おおむね次のとおりです。
決算・決算変更届
↓
登録経営状況分析機関へ経営状況分析を申請
↓
Y点の結果通知
↓
福島県へ経営規模等評価を申請・総合評定値を請求
↓
総合評定値Pの通知
その後、公共工事の入札に参加する場合には、発注者が行う入札参加資格審査へ進みます。当事務所の「福島県建設工事の入札参加資格申請をご希望の方へ」でも、経審から福島県の入札参加資格までの流れを説明しています。
総合評定値PはX1・X2・Y・Z・Wから計算する
総合評定値Pは、経営規模を評価するX1・X2、経営状況を評価するY、技術力を評価するZ、社会性等を評価するWを、定められた係数によって組み合わせて計算します。
令和8年7月1日以降の算定式は、次のとおりです。
P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
現在の総合評定値Pは最高2,159点、最低163点です。令和8年7月1日の改正ではW点の最低点が変更され、それに伴ってP点の最低点も変更されています。現行の評点範囲や改正内容は、国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」で確認できます。
| 評価項目 | 主な評価内容 | P点算出上の係数 | 評価単位 |
|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高 | 0.25 | 工事種類ごと |
| X2 | 自己資本額・利益額(2期平均) | 0.15 | 会社全体 |
| Y | 経営状況 | 0.20 | 会社全体 |
| Z | 技術職員数・元請完成工事高 | 0.25 | 工事種類ごと |
| W | 社会性等 | 0.15 | 会社全体 |
X1とZの係数は0.25で最も大きくなっていますが、係数が大きいことと、その項目の点数を上げやすいことは同じではありません。会社の完成工事高、財務内容、技術者の状況などによって、改善できる項目は異なります。
X1は工事種類ごとの完成工事高を評価する
X1では、会社全体の売上ではなく、経審を受ける工事種類ごとの年間平均完成工事高を評価します。2年平均または3年平均を選択できるほか、一定の場合には他の工事種類の完成工事高を加える「業種間積み上げ」があります。
X1の算定や業種間積み上げについては、「経営事項審査の完成工事高と業種間積み上げを解説」で具体例を交えて説明しています。どうぞご一読ください。
X2は自己資本額と利益額を評価する
X2は、自己資本額と利益額から会社の経営規模を財務面で評価する項目です。利益額には、営業利益に減価償却実施額を加えた利払前税引前償却前利益の2期平均を使用します。
X1と異なり、X2は会社全体について算出されます。自己資本額の選択や利益額の計算については、「経営事項審査の自己資本額と平均利益額を行政書士が解説」で詳しく説明しています。
Yは8つの財務指標から経営状況を評価する
Yは、登録経営状況分析機関が会社の財務内容を分析して算出する点数です。会社全体について算出されるため、土木一式工事や舗装工事などの工事種類によって数値が変わるものではありません。
Zは技術職員数と元請完成工事高を評価する
Zは、工事種類ごとの技術力を評価する項目です。資格や経験を有する技術職員と、発注者から直接請け負った工事の元請完成工事高を基に算出されます。
X1と同じく工事種類ごとに評価されるため、同じ会社でも工事種類によってZの点数が異なります。詳しくは、「経審のZ点|技術職員数と元請完成工事高について解説」をご参照ください。
Wは会社の社会性等を評価する
Wは、担い手の育成・確保、営業継続、防災活動、法令遵守、建設業の経理、研究開発、建設機械、ISO等の認証・登録など、会社の取組を評価する項目です。X2やYと同じく、会社全体について算出されます。
令和8年7月1日以降の申請では、社会保険加入に関する評価項目の削除、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の追加、CCUSの就業履歴蓄積措置に関する配点の見直し、不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャの追加などが行われました。
現在のW点と加点項目については、「経営事項審査の社会性等W点と加点項目を行政書士が解説」で詳しく説明しています。併せてご参照くださいますと幸いです。
P点は工事の種類によって異なる
経審の結果通知書には、経審を受けた工事種類ごとに総合評定値Pが記載されます。例えば、同じ会社でも土木一式工事が800点、舗装工事が750点というように異なる点数になることがあります。
Pを構成する項目のうち、X1とZは工事種類ごとに算出されます。一方、X2・Y・Wは会社全体について算出されるため、工事種類が違っても同じ数値が使用されます。
例えば、舗装工事の完成工事高が多く、舗装工事で評価できる資格を持つ技術職員も多い会社では、舗装工事のX1やZが高くなります。別の工事種類で完成工事高や対象となる技術職員が少なければ、その工事種類のP点は低くなることがあります。
経審の結果を確認するときは、会社全体として「P点はいくつだったか」ではなく、今後公共工事を受注したい工事種類について何点になっているのかを確認することが重要です。
P点を上げるには各評価項目を継続して確認する
ところで、P点を上げる方法は会社の状況によって異なります。完成工事高はX1、自己資本や利益はX2、財務内容はY、有資格者や元請完成工事高はZ、人材育成や制度整備などはWに影響します。
また、経審の申請直前になってからでは変更できない項目も少なくありません。完成工事高や利益はすでに終了した事業年度の結果であり、技術者の資格取得、人材育成、社内制度の整備にも時間が必要です。
そのため、現在の総合評定値通知書から、どの項目に改善の余地があるのかを確認し、次の審査基準日までに取り組めることを検討する必要があります。
特にX1とZは工事種類ごとの評価となるため、今後どの公共工事を受注したいのかという会社の方針と合わせて考えることが大切です。
資格取得、人材育成、財務内容の改善、福利厚生や社内制度の整備などを継続して進めることは、経審の点数だけでなく、会社の中長期的な経営基盤を整えることにもつながります。
P点と入札参加資格の格付けは同じではない
総合評定値Pは、公共工事の入札参加資格審査で使用される重要な客観的評価ですが、P点だけで入札参加資格や格付けが決まるとは限りません。入札参加資格や格付けの方法は、それぞれの発注者が定めているからです。
福島県が発注する建設工事に参加する場合も、経営事項審査とは別に福島県の入札参加資格審査を受ける必要があります。福島県の入札参加資格については、「福島県建設工事の入札参加資格申請をご希望の方へ」で詳しく説明しています。
P点は何点あればよいのか
P点に一律の合格点はありません。どの発注者の、どの工事種類の公共工事へ参加したいのかによって、必要となる点数の水準や格付けの基準が異なります。
福島県でも、経審の総合評定値Pがそのまま格付けになるわけではありません。経審の評価を基礎とする客観点に、県内業者については主観点を加えて総合点を算出し、工事発注種別ごとの格付けを行います。
そのため、経審を受ける際にはP点だけを確認するのではなく、実際に参加したい公共工事の発注者が定める格付基準や入札参加条件まで確認する必要があります。
経営事項審査は次の決算を見据えて準備する
公共工事を継続して直接請け負う会社では、経営事項審査の有効期間を切らさないよう、毎事業年度の決算後に手続きを進める必要があります。
また、完成工事高、利益、技術職員、各種の社内制度などは次回の経審にも影響するため、今回の申請だけでなく次の決算まで見据えた対応が必要です。
当事務所では、決算変更届、経営状況分析、経営規模等評価、総合評定値の請求まで、福島県の経営事項審査に関する一連の手続きに対応しています。経審の申請をご検討の場合は、「福島県で経営事項審査を受けたいとお考えの方へ」をご参照ください。
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行政書士 佐藤勇太
