
個人事業主でも、確定申告書や工事関係資料、営業所の写真などを適切に揃えれば、福島県で建設業許可を取得できます。重要なのは、許可要件を満たしていることを、福島県が定める資料で証明することです。
建設業許可の要件自体は全国共通ですが、要件をどの資料で裏付けるかは都道府県によって取扱いが異なります。
この記事では、個人事業主が福島県知事の一般建設業許可を新規申請する場合について、確定申告書による常勤性・経営経験の証明、白色申告、営業所技術者等、社会保険、営業所、財産的基礎まで、実際の申請経験を踏まえて解説します。
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確定申告書で常勤性と経営経験を証明する
個人事業主の新規申請では、所得税の確定申告書が重要な資料になります。福島県では、現在の常勤性と、過去の経営経験の双方で確定申告書が使われます。
同じ確定申告書でも、「現在その事業に常勤していること」と「過去に建設業を経営していたこと」では証明する目的が違います。この違いを分けて整理しておくことが大切です。
現在の常勤性は確定申告書第一表で示す
個人事業主本人が常勤役員等(経営業務の管理責任者等)となる場合、申請時点でその事業に常勤していることが必要です。
福島県では、個人の場合、健康保険・厚生年金関係の資料や住民税の特別徴収関係資料がないときは、所得税確定申告書によって常勤性を示す方法が定められています。
私が扱った最近の申請でも、個人事業主本人の常勤性は確定申告書第一表で証明しました。本人は国民健康保険に加入していましたが、国保関係の資料を追加して常勤性を裏付けたわけではありません。
なお、令和7年1月以降、税務署では申告書等の控えに収受日付印を押さない取扱いとなっています。国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」でも、この取扱いが案内されています。
e-Taxで申告した場合は、受信通知を添えることで提出した事実を確認できます。したがって、令和7年1月以降は、確定申告書の控えに税務署の収受日付印がないことだけを理由に、その控えが証明資料として使えないわけではありません。
常勤役員等の要件全体については、「建設業許可の経管(常勤役員等)の要件と証明方法を解説」も参考にしてください。
国保や住民税の普通徴収は常勤性の確認資料にならない
福島県の「建設業許可の手引」では、個人の常勤性を示す資料として、健康保険・厚生年金の標準報酬決定通知書、住民税の特別徴収関係資料、所得税確定申告書などが挙げられています。
一方、国民健康保険の加入資料や、住民税を普通徴収で納めている場合の納税通知書は、常勤性を示す資料として掲げられていません。
これは、国保に加入している事実だけでは、その人がどの事業所で仕事をしているのかまでは分からないと考えると理解しやすいでしょう。保険資格と特定の営業所での常勤性は別の問題です。
住民税も同じです。特別徴収では事業者が給与から住民税を差し引いて納付するため、本人と勤務先との関係が資料に表れますが、普通徴収では本人が直接納付します。
そのため、国保に加入し、住民税も普通徴収となっている個人事業主では、確定申告書が常勤性を示す重要な資料になります。今回の申請も、この方法で常勤性を証明しました。
経営経験では職業欄と事業収入が重要になる
常勤役員等の基本的なルートでは、建設業について5年以上の経営経験などが必要です。個人事業主としての期間を使う場合には、その期間に建設業を経営していたことを裏付けます。
福島県で確定申告書を使う場合、第一表の職業欄は重要です。「建設業」という記載だけでなく、これまでの申請では「土木工事業」「建築工事」など、建設業を営んでいたことが分かる表記でも認められています。
一方、職業欄が空欄だったり、実際の事業と異なる内容になっていたりすると、そのままでは建設業を営んでいたことを説明しにくくなります。過去には、税務署で記載を訂正してもらったうえで申請したこともありました。
事業収入欄も、職業欄の記載と併せて確認しておきたい項目です。職業欄から建設業を営んでいたことが読み取れても、事業収入が極端に少ない年は、その年の事業実態について追加の説明が必要になる可能性があります。
ただし、福島県の手引には「年間○円以上の事業収入が必要」といった具体的な金額基準は示されていません。
私は、事業収入が極端に少ない年については、その期間を建設業の経営経験として扱えるのか、追加の説明を求められる可能性も考えて準備しています。これは福島県が公表している金額基準ではなく、私の実務上の考えです。
給与収入がある年は時期を照らし合わせる
確定申告書に給与収入が記載されている年は、その給与がどの時期に、どこから支払われたものなのかも整理しておく必要があります。
給与収入があるという理由だけで、その年の経営経験がすべて使えなくなるとは限りません。例えば、年の途中まで会社員として勤務し、その後に個人事業として建設業を始めるケースがあります。
私が過去に扱った申請では、税務署に提出した開業届によって事業開始時期を示し、その日以降について個人事業主としての経営経験が認められたことがありました。
反対に、開業後も別の会社から継続して給与を受けている場合は、その勤務状況との関係を整理する必要があります。「いつから建設業を経営していたのか」を時系列で考えることが重要です。
白色申告では貸借対照表の作成に注意する
白色申告でも建設業許可を取得できます。ただし、白色申告の個人事業主が新規申請する場合は、建設業用の財務諸表を作成する段階で手間がかかることがあります。
白色申告では収支内訳書を作成しますが、建設業許可の申請では、これとは別に貸借対照表と損益計算書が必要です。収支内訳書だけでは決算日時点の資産や負債を把握できないため、通帳、請求書、借入関係資料などから必要な数字を補って作成します。
私が扱った申請では、現金・預金について通帳から期首と期末の残高を把握し、貸借対照表を作成しました。
できれば、決算日時点の完成工事未収入金、工事未払金、借入金などについても、請求書や借入関係資料、本人からの聞き取りによって整理しておいた方がよいでしょう。
ただし、白色申告では、税務申告のためにすべての資産や負債を貸借対照表の形で管理しているとは限りません。今回の申請でも、完成工事未収入金や工事未払金を正確に把握できない部分がありましたが、それだけで申請に支障が生じたわけではありません。
実際には、通帳や請求書、借入関係資料などを照らし合わせながら、決算日時点の財産状況を可能な範囲で整理していくことになります。
営業所技術者等は資格と実務経験を分けて証明する
個人事業主本人が、常勤役員等と営業所技術者等(旧・専任技術者)を兼ねることもできます。ただし、営業所技術者等については、申請する業種に対応する資格や実務経験を別に証明します。
実際に扱った、とび・土工・コンクリート工事業の新規許可申請では、2級の「とび・とび工」の技能検定資格を使用しました。
2級の場合は原則として合格後3年以上の実務経験が必要ですが、平成16年4月1日時点ですでに合格していた人については、1年以上の実務経験で足りる取扱いです。
今回必要となった1年分の実務経験は、発注書と工事請書の組合せで証明しました。福島県では、この組合せを使える場合、一方だけでは足りませんが、別途入金記録まで求める取扱いにはなっていません。
発注書と請書が揃わない場合は、工事内容、工期、相手方が分かる資料と、相手方からの入金額が分かる資料を組み合わせる方法があります。
実務経験によって営業所技術者等の要件を証明する場合の考え方については、「実務経験で建設業許可を取るコツを行政書士が解説」でも詳しく解説しています。
また、実務経験として使う期間については、その期間に本人が常勤または営業していたことも裏付ける必要があります。個人事業主であれば、期間分の所得税確定申告書などがその資料になります。
ここで混同しやすいのが、工事経歴書を作るための資料との違いです。
| 資料を使用する目的 | 対象となる期間 |
|---|---|
| 工事経歴書を作成する | 直前の事業年度 |
| 常勤役員等の経営経験を証明する | 必要な経営経験の期間 |
| 営業所技術者等の実務経験を証明する | 必要な実務経験の期間 |
同じ発注書や請書でも、工事経歴書と実務経験の証明では必要となる期間が異なります。何を証明するための資料なのかを分けて整理しておくことが大切です。
国保加入でも従業員の社会保険は別に考える
個人事業主本人が国民健康保険に加入していても、従業員を雇用している場合は、事業所として健康保険・厚生年金保険や雇用保険の適用関係を整理する必要があります。
建設業を営む個人事業所は、常時5人以上の従業員を使用する場合、原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。日本年金機構「適用事業所と被保険者」でも、個人事業所の適用関係が案内されています。
今回扱った申請は従業員5人未満の個人事業所でした。そのため、健康保険・厚生年金保険について加入を証明する資料は提出していません。
一方、雇用保険については「労働保険料等納入通知書」と、その領収書を提出しました。福島県の手引では、申告した事業者名や申告額、それに基づく納入額が分かる資料を使う方法も示されています。
個人事業主本人が国保であることと、従業員について社会保険の加入義務があるかどうかは別の問題です。事業主本人と従業員を分けて整理する必要があります。
営業所は写真で実態が伝わるようにする
建設業許可では、営業所として使用できる場所が確保されていることも必要です。
福島県では、申請者本人が所有する場合、建物の登記事項証明書などと、外観・看板・内観などが分かる営業所写真を用意します。賃貸の場合は、賃貸借契約書などによって使用関係を示します。
家族が所有する自宅敷地内の建物を営業所として使用した過去の申請では、使用承諾書を作成し、添付書類として提出しています。
写真は、敷地内の建物配置が分かるもの、営業所の外観、看板または表札を撮影しました。内部についても、事務机、応接セット、パソコンなどが分かるようにしています。
今回のケースでは、建物の登記事項証明書に営業所として使用する「附属建物」の記載がありませんでした。そのため、所有関係を補足するために市町村の課税関係資料も添付しました。
ただし、課税関係資料まで常に必要という意味ではありません。営業所の状況に応じて、使用できる権原と営業所としての実態が伝わる資料を準備することになります。
私が福島県の建設業許可申請を扱う際には、提出する写真だけでも「どの建物を、どのように営業所として使っているのか」が分かるように撮影しています。
当事務所では、建設業許可申請をご依頼いただいた場合、営業所写真の撮影もオプションではなく通常のサービス料金の範囲で対応しています。
財産的基礎は残高証明書を取る時期にも注意する
一般建設業の許可では、500万円以上の自己資本があることや、500万円以上の資金を調達する能力があることなど、財産的基礎または金銭的信用の要件を満たす必要があります。
個人事業主の場合、財務諸表で自己資本500万円以上を示せなくても、500万円以上の預貯金残高証明書などによって資金調達能力を証明できる場合があります。
福島県では、残高証明書や融資証明書などは発行後1か月以内のものとされ、事前審査で他の要件を満たすと通知された後に取得するよう示されています。
そのため、許可申請の準備を始めた段階で残高証明書を取得する必要はありません。早く取りすぎると、正式に必要となる時点で期限を過ぎてしまう可能性があります。
私の実務でも、まず常勤役員等、営業所技術者等、営業所などについて事前審査を進めています。他の要件に問題がないことが分かってから、依頼者に残高証明書を取得してもらいます。
財産的基礎について詳しくは、「建設業許可の資金要件をクリアするコツを行政書士が解説」で解説しています。
個人事業主の申請は資料の目的を分けて準備する
個人事業主の建設業許可申請では、確定申告書、発注書や請書、通帳、社会保険関係書類など、日頃の事業で使用している資料を組み合わせながら要件を証明します。
特に分かりにくいのは、同じ資料でも使用する目的が異なることです。確定申告書は現在の常勤性や過去の経営経験に使われ、工事関係資料は営業所技術者等の実務経験や工事経歴書の作成にも使用します。
必要となる期間や、資料から明らかにしなければならない内容は、要件ごとに異なります。まず、常勤役員等、営業所技術者等、営業所、社会保険、財産的基礎の各要件について、「何を証明するのか」「どの期間が必要か」「どの資料を使うか」を整理してください。
そのうえで、同じ資料を複数の要件に使う場合は、提出目的ごとに不足がないかを確認することが重要です。
当事務所では、お手元の資料から申請に利用できる経営経験・実務経験の期間を検討し、不足する資料の洗い出しから営業所写真の撮影まで対応しています。福島県で新規許可の取得をご検討の方は、「福島県で建設業許可を取りたいとお考えの方へ」をご覧ください。




事務所横に1台分の駐車場をご用意しております。
行政書士 佐藤勇太
