
工事経歴書を作成するときは、最初から様式に工事を入力するのではなく、対象年度の売上や工事資料を確認し、工事経歴書の対象となる建設工事を確定する必要があります。
その後、許可業種ごとの完成工事高を集計し、記載ルールに従って掲載する工事を選びます。工事経歴書を作成した後は、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」や損益計算書まで、完成工事高の数字が一致しているか確認します。
この記事では、資料の準備から工事経歴書の作成、他の書類との照合までを、実際の作業順に沿って解説します。
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工事経歴書を作成する前に対象年度と資料を確認する
工事経歴書には、対象となる事業年度に完成した工事と、事業年度末時点で完成していない主な工事を記載します。そのため、まず対象年度を確定し、その期間の工事を確認できる資料を準備します。
工事経歴書だけを単独で作るのではなく、この段階から決算書の売上や完成工事高との関係を意識しておくと、後の照合作業を行いやすくなります。
工事台帳や契約書などから対象年度の工事を確認する
工事台帳を作成している会社であれば、まず対象年度の工事台帳を確認します。工事台帳だけでは必要な情報が分からない場合には、工事請負契約書、注文書・注文請書、請求書、売上台帳、総勘定元帳なども使用します。
工事経歴書を作成するためには、工事内容、注文者、元請・下請の別、工事場所、請負代金、工期、配置技術者などを確認できる状態にしておく必要があります。配置技術者を施工途中で変更している場合には、変更前の技術者についても把握しておきます。
売上の中から建設工事を抽出する
会社の売上がすべて完成工事高になるとは限りません。建設工事の請負による売上と、それ以外の売上が混在している会社では、まず建設工事に該当するものを抽出します。
例えば、資材や物品の販売、設計・調査、運送、保守点検など、建設工事に該当しない業務の売上は、原則として完成工事高には含めません。福島県の記載例でも、兼業売上は完成工事高とは分けて扱い、財務諸表との整合を確認するとされています。
名称だけでは建設工事に該当するか判断できない場合には、契約内容や実際の施工内容をチェックします。建設業法上の工事区分については、「建設業許可29業種の工事区分と業種判定を行政書士が解説」でも詳しく説明しています。
完成工事を許可業種とその他の建設工事に分ける
対象となる建設工事を抽出したら、対象年度の完成工事高を確定させます。そのうえで、許可を受けている業種の工事と、それ以外の建設工事を区分します。
ここで確定した数字は、工事経歴書だけでなく、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」や建設業財務諸表にも使用します。
完成工事と未成工事を確認する
対象年度中に完成した工事と、事業年度末時点で完成していない工事を確認します。通常は、対象年度の完成工事について完成工事高を集計し、未成工事とは分けて把握します。
ただし、工事進行基準を採用している場合や、顧客との契約に基づく義務の履行状況に応じて収益を認識している場合には、未成工事の取扱いが異なります。この点については、現行の建設業法施行規則別記様式第二号の記載要領を確認する必要があります。
許可業種とその他の建設工事を区分する
完成工事について、自社が許可を受けている業種のどの工事に該当するかを仕分けします。例えば、管工事業と水道施設工事業の許可を受けている会社であれば、それぞれの完成工事高を分けて集計します。
一方、許可を受けていない業種について施工した軽微な建設工事があれば、その金額も把握しておく必要があります。「直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)」で、許可業種とは別に「その他の建設工事の施工金額」として記載するためです。
工事経歴書は許可を受けている建設工事の種類ごとに作成するため、許可業種以外の軽微な建設工事について別葉の工事経歴書を作成することまでは求められていません。もちろん、1つの工事を複数の建設工事の種類に重複して完成工事高へ計上することはできません。
| 売上・工事の区分 | 取扱い |
|---|---|
| 許可業種の建設工事 | 許可業種ごとに完成工事高を集計 |
| 許可業種以外の軽微な建設工事 | 「その他の建設工事」として集計 |
| 建設工事に該当しない売上 | 完成工事高から除外 |
税込・税抜を確認して完成工事高を集計する
工事を集計する段階で、税込・税抜のどちらで作成するかも確認します。経営事項審査を受ける場合は、工事経歴書の請負代金を消費税等を除いた金額(税抜)で記載します。
経審を受けない場合は、福島県の記載例に従い、財務諸表の処理方法に合わせます。途中で税込・税抜が混在しないようにしたうえで、許可業種ごとの完成工事高、元請完成工事高、その他の建設工事の施工金額を集計してください。
記載要領に従って工事経歴書に載せる工事を選ぶ
業種ごとの完成工事高を確定したら、そのすべてを工事経歴書へ1件ずつ記載するとは限りません。記載する完成工事の範囲は、経営事項審査を受けるかどうかによって異なります。
全国共通の記載方法は、建設業法施行規則別記様式第二号の記載要領と国土交通省の建設業許可事務ガイドラインに示されています。福島県は、これらを踏まえた具体的な記載方法や記載フローを「建設業許可申請の手引・様式等ダウンロード」で公表しています。
福島県では6割または20件程度まで記載する
経営事項審査を受けない場合、国の記載要領では、主な完成工事を請負代金の大きい順に記載し、その後に主な未成工事を記載することとされています。経審を受ける場合のような7割という割合は、全国共通の基準として定められていません。
これに対して福島県では、完成工事を請負代金の大きい順に、完成工事高の6割を超えるまで、または20件程度まで記載し、その後に主な未成工事を請負代金の大きい順に記載する方法を示しています。
経審を受ける場合は7割基準で記載する
経営事項審査を受ける場合は、最初に元請完成工事を請負代金の大きい順に記載し、元請完成工事高のおおむね7割を超えるところまで記載します。
その後、まだ記載していない元請完成工事と下請完成工事を合わせ、請負代金の大きい順にすべての完成工事高のおおむね7割を超えるところまで記載し、最後に主な未成工事を記載します。
福島県は、この一連の手順をフロー形式でも示しています。経審を受ける会社では、文章だけで確認するよりも、この資料を参照しながら作成すると記載順を把握しやすくなります。
なお、経営事項審査では完成工事高が業種ごとの評価に使用されます。工事経歴書と経審の完成工事高との関係については、「経営事項審査の完成工事高と業種間積み上げを解説」でも説明しています。
軽微な建設工事は10件を超えて記載する必要がない
経審を受ける場合には、軽微な建設工事について10件を超えて記載する必要はありません。これは「工事経歴書は10件記載すればよい」という意味ではなく、7割基準に従って工事を記載する途中で適用される軽微な建設工事についてのルールです。
すべての完成工事高の7割を確認する段階では、先に元請工事として記載した軽微な建設工事の件数も含めて10件を判定します。福島県の記載フローでも、この取扱いが示されています。
なお、経審を受ける場合の工事経歴書は税抜で作成しますが、軽微な建設工事に該当するかどうかについて、請負代金額による500万円未満の基準は消費税込みで判定します。建築一式工事について請負代金額で判定する場合の1,500万円未満の基準も同様です。
記載する工事が決まったら、注文者、工事名、工事場所、配置技術者、請負代金、工期などを工事経歴書(様式第2号)へ記入します。各欄の具体的な記入方法は、福島県が公表している記載要領・記載例を確認してください。
工事経歴書の小計と合計を区別して確認する
工事経歴書を作成したら、「小計」と「合計」を区別して確認します。小計にはそのページに記載した完成工事の件数と請負代金を記載しますが、最終ページの合計には、個別記載を省略した工事も含むすべての完成工事を記載します。
したがって、完成工事高の6割や7割まで工事を個別に記載した場合でも、「合計」がその6割や7割になるわけではありません。合計欄には、その業種について対象年度に計上したすべての完成工事高を記載します。
工事施工金額と損益計算書まで完成工事高を照合する
工事経歴書が完成したら、その書類だけで確認を終えるのではなく、同時に提出する他の書類との整合性を確認します。特に確認したいのが、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」と建設業財務諸表の損益計算書です。
前工程で建設工事以外の売上を除外し、許可業種とその他の建設工事を区分してきた結果が、ここで1つの完成工事高としてつながります。
工事経歴書の合計と工事施工金額を照合する
まず、許可業種ごとに工事経歴書の最終ページにある完成工事高の「合計」を確認します。その金額と、「直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)」の対象事業年度の行に記載した同じ業種の完成工事高を照合します。
確認するのは、個別に掲載した工事だけを合計した小計ではありません。元請工事についても、工事経歴書の「うち元請工事」の合計と、工事施工金額に記載した元請完成工事高との整合性を確認します。
工事施工金額と損益計算書を照合する
次に、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」に記載した許可業種の完成工事高と「その他の建設工事の施工金額」を合計し、建設業財務諸表の損益計算書に記載する完成工事高と照合します。
数字が合わない場合には、建設工事ではない売上を完成工事高に含めていないか、許可業種以外の軽微な建設工事が「その他の建設工事」から漏れていないかなどを確認します。税込・税抜の処理や工事の計上年度についても確認が必要です。
なお、工事進行基準などを採用している場合には、請負契約額、当期に認識する完成工事高、工期の関係が通常の完成基準とは異なります。採用している会計処理を踏まえて、それぞれの書類の数字を確認する必要があります。
工事経歴書は資料確認から順番に作成する
工事経歴書は、様式の記入方法だけを確認しても正確には作成できません。対象年度の工事資料から建設工事を抽出し、完成工事高を確定したうえで、許可業種とその他の建設工事に区分する必要があります。
その後、経審の有無に応じた記載方法で工事を選び、工事経歴書を作成します。最後に工事経歴書の合計、工事施工金額、損益計算書の完成工事高まで照合することで、申請・届出書類全体の数字を一致させることができます。
建設業許可の新規申請や、毎事業年度終了後の決算変更届などでは、工事経歴書を作成する場面があります。工事の区分や完成工事高の集計、他の提出書類との整合性に不安がある場合には、申請や決算変更届とあわせて行政書士へ依頼することもできます。
当事務所では、建設業許可申請や事業年度終了後の決算変更届について、工事経歴書を含む提出書類の作成・確認に対応しています。
二本松市、本宮市、福島市、郡山市を中心とする福島県中通り地域で、建設業許可や決算変更届の手続きについてお困りの場合はお問い合わせください。




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行政書士 佐藤勇太
