
近年、大雨や台風による浸水被害が各地で発生し、住宅からは水に浸かった家具や畳、家電などが大量に排出されています。また、損壊した建物の解体によって、木くずやがれき類などが発生する場合もあります。
こうした災害廃棄物の処理は、市町村が中心となって行います。ただし、災害によって発生した廃棄物がすべて一般廃棄物になるわけではありません。廃棄物が発生した状況によっては、産業廃棄物として処理しなければならないものもあります。
また、大量の災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するため、廃棄物処理法には処理施設の設置、産業廃棄物処理施設の活用、処理の再委託などに関する非常災害時の特例が設けられています。
令和8年法律第43号による改正では、再々委託、最終処分場の指定、自治体や処理事業者等との協定など、平時から処理能力を確保しやすくするための仕組みも強化されています。
この記事では、自治体が災害廃棄物を処理する際の基本的な仕組みと、廃棄物処理法上の主な特例について解説します。
【この記事の要点】
- 災害廃棄物のうち市町村が処理するものは、一般廃棄物として市町村が処理主体となります。
- 災害で発生したものがすべて一般廃棄物になるわけではなく、産業廃棄物として事業者が処理するものもあります。
- 非常災害時には施設設置、産業廃棄物処理施設の活用、再委託などの特例があり、令和8年改正では、再々委託や最終処分場の指定などの制度も盛り込まれています。
コンテンツ
水害で発生する災害廃棄物
水害では、大量の廃棄物が短期間に発生します。住宅が浸水すれば、家具、畳、布団、家電製品などが使用できなくなることがあります。建物そのものが損壊すれば、木くず、コンクリートがら、金属くずなども発生します。
また、水害廃棄物は水分や泥を含んでいることが多く、腐敗や悪臭も生じやすいため、早期に収集・処理体制を確保する必要があります。自治体における平時の準備から発災後の処理までの基本的な考え方は、環境省の「災害廃棄物対策指針」にまとめられています。
災害廃棄物とは
自然災害によって発生し、市町村が処理する家具、家電、畳、損壊家屋の廃材などについては、一般に「災害廃棄物」という言葉が使われています。
そして、令和8年法律第43号による改正では、廃棄物処理法第2条の3において、非常災害によって生じた廃棄物について「非常災害廃棄物」という用語が明確にされています。
ただし、非常災害廃棄物が一般廃棄物と産業廃棄物とは別の第3の廃棄物区分になるわけではありません。したがって、災害時にも、一般廃棄物と産業廃棄物という基本的な区分を前提として処理する必要があります。
一般廃棄物と産業廃棄物の区分
自治体や処理業者が最初に把握する必要があるのが、処理しようとしている廃棄物の位置付けです。災害によって発生したという理由だけで、すべてが市町村の処理する一般廃棄物になるわけではありません。
| 発生する場面 | 基本的な取扱い |
|---|---|
| 被災住宅から排出される家具・畳などの片付けごみ | 市町村が処理する災害廃棄物として、一般廃棄物に該当 |
| 被災後の事業活動に伴って発生する廃棄物 | 事業者が処理することが原則。種類により産業廃棄物または事業系一般廃棄物 |
| 所有者が解体業者と契約して行う自費解体 | 解体工事に伴う木くず・がれき類等は原則として産業廃棄物 |
| 市町村が災害等廃棄物処理事業として行う公費解体 | 市町村が処理する災害廃棄物として扱う |
なお、この表は基本的な取扱いを示したものです。個別の災害で設けられる公費解体や費用償還の制度、自治体による仮置場への受入れなどによって実際の処理方法が異なる場合があります。
被災事業所から出る廃棄物
事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければなりません。ただし、店舗や工場などの事業所から発生した廃棄物がすべて産業廃棄物になるわけではありません。
産業廃棄物に該当するのは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃プラスチック類、金属くず、汚泥など法令で定められたものです。それ以外のものは事業系一般廃棄物となります。
そのため、「住宅から出たものは一般廃棄物、事業所から出たものは産業廃棄物」と発生場所だけで区分することはできません。
公費解体と自費解体の違い
災害によって損壊した建物の解体では、誰が解体・処理を実施するのかが重要です。通常、建物所有者が解体業者と契約して建物を解体した場合、解体工事によって発生した木くず、がれき類、廃プラスチック類、金属くずなどは産業廃棄物として処理します。
一方、大規模な災害では、市町村が災害等廃棄物処理事業として損壊家屋等を解体・撤去する「公費解体」が行われることがあります。この場合、市町村が災害廃棄物として処理を行います。
また、所有者がいったん解体費用を負担した後、一定の要件を満たした場合に自治体から費用の払戻しを受ける自費解体の制度が設けられる場合もあります。
自費解体では、原則として解体事業者が産業廃棄物として処理しますが、市町村が解体工事で発生した廃棄物を仮置場で受け入れる場合もあります。具体的な取扱いは、その災害について設けられた制度を把握する必要があります。
ただし、解体工事に伴う廃棄物と一般家庭に残された家具などでは平時から取扱いが異なります。詳しくは、当事務所の「【相談事例】解体工事前の残置物は産廃の許可で運べるのか」でも解説しています。
災害廃棄物の処理主体
一般廃棄物の処理は、市町村が担います。そのため、災害によって住宅などから発生した片付けごみや、公費解体によって生じた廃棄物など、市町村が災害廃棄物として処理するものについては、市町村が処理の中心となります。
ただし、大規模な水害や地震では、市町村が保有する人員、収集車両、焼却施設などだけでは対応できない場合があります。その場合には、都道府県による調整、他市町村からの応援、民間処理業者への委託、広域処理などを組み合わせて対応します。
| 主体 | 主な役割 |
|---|---|
| 市町村 | 災害廃棄物処理の主体、収集運搬、仮置場、処分等 |
| 都道府県 | 市町村への支援、市町村間や広域処理の調整 |
| 民間事業者 | 収集運搬、選別、中間処理、最終処分、解体等 |
| 国 | 技術的・財政的支援、広域的な調整、大規模災害時の代行等 |
市町村が処理主体であっても、すべての作業を市町村自身が行うわけではありません。災害の規模に応じて、産業廃棄物処理業者、建設業者、解体業者などの処理能力も活用されます。
仮置場での分別・処理
大量の家具、畳、木くずなどが一斉に排出された場合、それらを被災現場から直接焼却施設や最終処分場へ搬入することは困難です。そこで、災害廃棄物を一時的に集積し、分別・保管する仮置場が必要になります。
仮置場では、木くず、金属くず、コンクリートがら、家電、可燃物、不燃物などを分別します。混合した状態で大量に集積すると、その後の選別が困難になり、処理期間や費用の増大につながるからです。
また、粉じん、悪臭、害虫、汚水、火災などへの対策も必要です。そのため、市町村は平時から候補地、搬入経路、必要面積、分別配置などを検討しておく必要があります。
災害廃棄物処理の基本原則
例えば、大雨によって多数の住宅が浸水し、仮置場へ大量の畳、家具、木くずなどが搬入されたとします。その際、市町村の焼却施設だけでは処理できなければ、民間の処理施設を利用できるのか、どこまで処理を委託できるのか、県外処理が必要になるのかといった判断が必要です。
廃棄物処理法第2条の3は、非常災害廃棄物の処理について基本原則を定めています。
第2条の3
非常災害により生じた廃棄物(以下「非常災害廃棄物」という。)は、人の健康又は生活環境に重大な被害を生じさせるものを含むおそれがあることを踏まえ、生活環境の保全及び公衆衛生上の支障を防止しつつ、その適正な処理を確保することを旨として、円滑かつ迅速に処理されなければならない。2 非常災害廃棄物は、その発生量が著しく多量であることを踏まえ、その円滑かつ迅速な処理を確保しつつ、将来にわたって生ずる廃棄物の適正な処理を確保するため、分別、再生利用等によりその減量が図られるよう適切な配慮がなされなければならない。
この規定からは、災害廃棄物について「適正な処理」と「円滑・迅速な処理」の両立が求められていることが分かります。したがって、廃棄物処理法には通常時とは異なる施設の設置や処理委託に関して、次のような特例が設けられています。
| 主な制度 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 市町村による施設設置 | 平時から準備し、非常災害時の施設設置を迅速化 | 第9条の3の2 |
| 受託事業者等による施設設置 | 一定の要件を満たす場合、許可ではなく届出で設置 | 第9条の3の3 |
| 産業廃棄物処理施設の活用 | 一定の一般廃棄物を既存の産廃施設で処理 | 第15条の2の5 |
| 再委託・再々委託 | 民間事業者等を活用して必要な処理能力を確保 | 第6条の2 |
| 最終処分場の指定 | 非常災害時の最終処分先を平時から確保 | 第9条の3の4 |
一般廃棄物処理施設の設置特例
発災後、既存の焼却施設や破砕施設だけでは処理能力が不足すれば、仮設処理施設などが必要になる場合があります。これに対処するため、廃棄物処理法は、市町村が平時から施設設置に備える場合と、市町村から処分を受託した事業者等が施設を設置する場合について、それぞれ特例を設けています。
市町村が設置する場合
廃棄物処理法第9条の3の2は、市町村が非常災害時の廃棄物を処分するために一般廃棄物処理施設を設置する場合の特例です。
この特例は、市町村が一般廃棄物処理計画に必要な事項を定め、都道府県知事と協議して同意を得ておくことで、非常災害が発生した場合の施設設置を迅速に進める仕組みです。平時から施設設置を想定して手続を進めておく点に、この制度の特徴があります。
受託事業者等が設置する場合
廃棄物処理法第9条の3の3は、非常災害廃棄物の処分を受託した者等が一般廃棄物処理施設を設置する場合の特例です。
これは、通常であれば一般廃棄物処理施設の設置許可が必要となる場合でも、一定の要件を満たせば届出によって設置できることを認める規定です。令和8年改正では、市町村から直接処理を受託した者だけでなく、再受託者や再々委託を受けた者まで対象が拡大されています。
また、生活環境の保全上の支障が生じるおそれが少ないものとして政令で定める一定の施設については、提出書類を簡素化する仕組みも設けられています。ただし、特別管理一般廃棄物に該当する非常災害廃棄物については、別途の規定が置かれており、通常の非常災害廃棄物と同じ取扱いにはなりません。
産業廃棄物処理施設の活用
ところで、産業廃棄物処理業者が自治体から「災害廃棄物を受け入れられないか」と相談を受けた場合、自社の施設で一般廃棄物を処理できるのかが問題になります。
廃棄物処理法第15条の2の5では、産業廃棄物処理施設の設置者が、その施設で処理している産業廃棄物と同様の性状を有する一定の一般廃棄物を処理できる仕組みを設けています。
これは非常災害時だけの制度ではありません。平時にも所定の届出によって対象となる一般廃棄物を処理できる場合があります。
一方、非常災害のために必要な応急措置として一般廃棄物を処理する場合には、処理を開始した後、遅滞なく届出を行うことが認められています。そのため、「災害廃棄物が一般廃棄物である以上、産業廃棄物処理施設では処理できない」と一律に判断することはできません。
ただし、どの産業廃棄物処理施設でも利用できるわけではありません。施設の種類や処理する廃棄物の性状など、法令上の要件を満たす必要があります。
再委託・再々委託の特例
災害発生時には、被災した市町村から災害廃棄物処理を受託した事業者や事業者団体だけでは、必要な車両、人員、処理能力を確保できないことがあります。一般廃棄物処理では再委託が制限されていますが、非常災害時には一定の要件のもとで再委託が認められています。
また、令和8年改正により、廃棄物処理法第6条の2第3項では、非常災害廃棄物について、再受託者からさらに他の者へ処理を委託する再々委託も認める仕組みが設けられています。
例えば、被災地域内の処理能力だけでは不足し、県外の処理業者を利用する場合には、この仕組みが広域的な処理能力の確保につながります。ただし、自由に再委託・再々委託できるわけではなく、一般廃棄物処理計画や法令上の委託基準に従う必要があります。
また、特別管理一般廃棄物に該当する非常災害廃棄物についても、一定の要件のもとで再委託・再々委託が認められます。この場合は、通常の非常災害廃棄物とは別に、廃棄物処理法第6条の2第5項に基づき、特別管理一般廃棄物処理委託基準に従う必要があります。
非常災害廃棄物最終処分場の指定
分別や再資源化、焼却、破砕などを行っても、最終的に埋立処分しなければならない災害廃棄物は残ります。
令和8年改正による廃棄物処理法第9条の3の4では、非常災害廃棄物の最終処分を担う施設の設置者を、都道府県知事が申請に基づいて指定する制度が設けられています。もっとも、対象となる最終処分場には限定があります。
一般廃棄物最終処分場については、政令で定めるものが対象です。また、産業廃棄物最終処分場については、単に産業廃棄物処理施設として許可を受けているだけでは足りません。
前章で説明した第15条の2の5第1項に基づき、一般廃棄物処理施設としても設置されている産業廃棄物最終処分場に限られます。
指定を受けた設置者は、非常災害時に市町村から法令上の委託基準に従って処分の受託を求められた場合、正当な理由がない限り、その委託を受けなければなりません。
一方、指定された最終処分場については定期検査に関する特例も設けられています。指定には更新が必要であり、正当な理由なく受託を拒否するなど一定の場合には指定取消しの対象となります。
平時からの処理体制の確保
大量の災害廃棄物が発生してから、仮置場、収集車両、処理業者、最終処分先を一から確保することには限界があります。令和8年改正では、一般廃棄物処理計画の記載事項に非常災害時における施策に関する事項が追加されています。
また、都道府県については第5条の6の2、市町村については第6条の4に、非常災害廃棄物の処理に関する協定を締結する努力義務が設けられています。
協定の相手は民間事業者だけではありません。都道府県では、非常災害廃棄物を処理できる事業者等との協定のほか、管内市町村や隣接都道府県との協定が想定されています。
市町村についても、処理事業者等との協定に加え、都道府県や他市町村との間で、人員の派遣などを含む協定を締結することが想定されています。
| 平時に検討する事項 | 主な内容 |
|---|---|
| 仮置場 | 候補地、必要面積、搬入経路、分別配置 |
| 収集運搬 | 車両、人員、応援要請の方法 |
| 中間処理 | 一般廃棄物処理施設、産廃施設、仮設施設の活用 |
| 最終処分 | 処分先、残余容量、広域処理 |
| 民間事業者との連携 | 収集運搬業者、処分業者、建設・解体業者等との協定 |
| 自治体間の連携 | 都道府県、他市町村、隣接都道府県との協力体制 |
自治体においては「誰に何を依頼できるのか」、処理業者においては「災害時に自社がどの処理を担えるのか」を平時から具体化しておく必要があります。
福島県の災害廃棄物処理体制
福島県では、地震、津波、風水害などが発生した場合に備えて、「福島県災害廃棄物処理計画」を策定しています。
また、2021年には福島県、県内59市町村、13一部事務組合の間で「福島県災害廃棄物等の処理に係る相互応援に関する協定」が締結されています。被災した市町村等から県に調整を求め、県が県内の他市町村等へ応援を要請する仕組みです。
さらに、福島県は一般社団法人福島県産業資源循環協会と災害廃棄物の撤去、収集運搬、処理・処分について協力する協定を締結しているほか、一般社団法人福島県解体工事業協会とも建築物等の解体に伴う災害廃棄物の収集運搬等について協定を締結しています。
福島県災害廃棄物処理計画では、市町村内での処理が困難な場合に、県内の民間事業者団体や県内市町村等との調整を行い、必要に応じて県外を含む広域処理へつなげることが想定されています。
大規模災害における国の関与
廃棄物処理法に基づく非常災害廃棄物への対応と、災害対策基本法に基づく大規模災害への対応は区別する必要があります。
まず、災害廃棄物については市町村を処理主体として、都道府県、他自治体、民間事業者などによる支援を組み合わせます。さらに、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合には、災害対策基本法第86条の5による仕組みがあります。
同条では、環境大臣が災害によって生じた廃棄物の処理について基本的な方向などを示す指針を定めることができるほか、一定の場合には、市町村長からの要請に基づき、環境大臣が市町村に代わって廃棄物を処理する制度が設けられています。
平成27年の廃棄物処理法・災害対策基本法の改正により、平時から非常災害時までの廃棄物処理法上の仕組みと、大規模災害時における災害対策基本法上の仕組みを組み合わせて対応する制度が整備されました。
災害廃棄物処理は平時の備えが重要
大規模な水害や地震では、市町村が通常保有している人員、収集車両、焼却施設、最終処分場だけでは、発生した災害廃棄物を処理できない場合があります。
そのため、仮置場、収集運搬、処理施設、最終処分先を確保するとともに、廃棄物処理業者、建設・解体業者、都道府県、他市町村との連携体制を平時から具体化しておく必要があります。
令和8年改正も、再々委託、非常災害廃棄物最終処分場の指定、自治体間や処理事業者等との協定などを通じて、災害時に必要となる処理能力を平時から確保する方向で制度を強化する内容となっています。






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行政書士 佐藤勇太
