
建設業許可の要件として、従来「専任技術者」と呼ばれていた者は、令和6年12月13日施行の建設業法改正により、「営業所技術者」または「特定営業所技術者」と呼ばれるようになりました。
ただし、名称は変わったものの、建設業許可を取得・維持するうえで重要な要件であることに変わりはありません。
営業所技術者は、経営業務の管理責任者に代わる常勤役員等の要件と並び、建設業許可の中核となる要件の一つです。
資格を持っていれば比較的簡単に証明できる場合もありますが、学歴や実務経験によって要件を満たす場合には、経験した工事の内容や期間を資料によって裏付けなければなりません。
この記事では、営業所技術者になるための資格、学歴、実務経験の要件に加え、福島県で申請する場合の証明方法、自己証明と他者証明の違い、常勤性、兼務、交代時の注意点について解説します。
コンテンツ
営業所技術者とは
営業所技術者とは、建設業許可を受ける営業所に常勤し、専らその職務に従事して、請負契約の締結や工事の履行について技術的な管理を行う者です。
一般建設業の営業所には「営業所技術者」、特定建設業の営業所には、より厳しい要件を満たす「特定営業所技術者」を配置します。
本店だけで建設業を営む場合には、その本店に営業所技術者を配置します。支店や営業所でも建設工事の請負契約を締結する場合には、原則として、それぞれの営業所に要件を満たす営業所技術者を配置しなければなりません。
営業所技術者は、工事現場に配置される主任技術者や監理技術者とは別の制度です。それぞれの違いを簡単に示すと、次のようになります。
| 項目 | 営業所技術者 | 主任技術者・監理技術者 |
|---|---|---|
| 配置される場所 | 建設業を営む営業所 | 個別の工事現場 |
| 主な役割 | 請負契約や工事履行の技術的管理 | 工事現場における施工の技術的管理 |
| 必要となる場面 | 建設業許可を受ける営業所 | 請け負った建設工事 |
| 旧来の呼称 | 専任技術者 | 原則として変更なし |
営業所技術者は営業所に勤務する立場ですが、一定の条件を満たす場合には、主任技術者または監理技術者として工事現場の職務を兼ねることがあります。この兼務については、記事を改めて詳しく説明します。
営業所技術者になるための要件
一般建設業の営業所技術者になるための主なルートは、次のとおりです。
- 該当する国家資格等を保有している
- 指定学科を卒業し、所定の実務経験がある
- 原則として10年以上の実務経験がある
- 一定の施工管理技術検定の第1次検定に合格し、所定の実務経験がある
いずれかのルートで要件を満たせばよいのですが、取得しようとする建設業の業種ごとに、認められる資格、指定学科、実務経験の内容が異なります。
そのため、「建設関係の資格を持っている」「長年建設会社に勤務している」というだけで、すべての業種の営業所技術者になれるわけではありません。許可を取得したい業種と、資格や経験の内容が対応しているかを確認する必要があります。
国家資格等によって要件を満たす場合
該当する業種について定められた国家資格等を保有している場合には、資格証明書によって営業所技術者の要件を証明できます。
代表的な資格には、次のようなものがあります。
- 土木施工管理技士
- 建築施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 建築士
- 技術士
- 電気工事士
- 技能士
ただし、同じ資格でも、資格の級や種別によって対応できる業種が異なります。例えば、2級施工管理技士は、合格した種別によって認められる建設業の種類が変わることがあります。
また、技能士については、1級であれば資格のみで認められる一方、2級の場合には、資格取得後の実務経験を求められることがあります。資格名だけで判断せず、許可を受けようとする業種との対応を確認しなければなりません。
資格による証明は、実務経験による証明と比べて、必要な資料が少ないことが一般的です。資格証や合格証明書の写しを用意できれば、過去の工事資料を長期間分集める必要がないため、申請準備の負担を抑えられます。
なお、1人の技術者が複数の業種に対応する資格を持っている場合には、同じ営業所内で複数業種の営業所技術者を兼ねることも可能です。
指定学科の卒業と実務経験によって要件を満たす場合
大学、高等専門学校、高等学校などで、許可を受けようとする業種に対応する指定学科を卒業している場合には、必要な実務経験年数が短縮されます。
一般的には、次の実務経験が必要です。
- 大学または高等専門学校等の指定学科を卒業した場合:卒業後3年以上
- 高等学校等の指定学科を卒業した場合:卒業後5年以上
指定学科には、土木工学、建築学、機械工学、電気工学などがありますが、どの学科が認められるかは、申請する建設業の種類によって異なります。
具体的にどの学校のどの学科が指定学科として認められるかは、事前に確認が必要です。学校名や学科名だけでは判断できない場合には、卒業証明書に加えて、成績証明書や履修証明書などの提出を求められることがあります。
なお、指定学科を卒業していても、実際に経験した業務が許可を受けようとする業種の建設工事に該当しなければ、必要な実務経験として認められません。学歴と実務経験の両方を確認する必要があります。
実務経験のみによって要件を満たす場合
該当する国家資格を持たず、指定学科も卒業していない場合には、原則として、許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験が必要です。
ここでいう実務経験とは、単に建設会社に勤務していた期間ではありません。許可を受けようとする建設工事について、施工に関する技術上の経験を積んでいたことが必要です。
例えば、営業、経理、総務などの事務だけを担当していた期間は、通常、営業所技術者の実務経験には含まれません。また、複数の業種を同時に経験していたとしても、同じ期間を別々の業種の実務経験として重複して算入できるとは限りません。
実務経験で要件を満たす場合には、経験年数だけでなく、工事の内容、工期、請負関係、勤務先への在籍状況などを資料で示す必要があります。長期間勤務していたとしても、当時の資料が残っていなければ、証明が難しくなることがあります。
※ 実務経験の証明については、「実務経験で建設業許可を取るコツを行政書士が解説」の記事でも詳しく解説しています。
第1次検定の合格と実務経験によって要件を満たす場合
施工管理技術検定制度の改正により、一定の第1次検定に合格し、その後に所定の実務経験を積むことで、営業所技術者の要件を満たせる場合があります。
対象となる第1次検定の種類や、必要となる実務経験年数は、許可を受けようとする業種や合格した検定によって異なります。第1次検定に合格していれば、直ちにすべての業種の営業所技術者になれるわけではありません。
また、第1次検定の合格前に積んだ経験ではなく、原則として合格後の実務経験が問題となるため、合格時期と実際に担当した工事の期間を確認する必要があります。
このルートを利用する場合にも、合格証明書だけでなく、必要な実務経験を証明する資料が必要です。資格のみで要件を満たす場合と比べると、資料の準備には注意が必要です。
特定営業所技術者になるための要件
特定建設業の許可を受ける営業所には、一般建設業の営業所技術者よりも厳しい要件を満たす「特定営業所技術者」を配置しなければなりません。
特定営業所技術者になる主な方法は、次のとおりです。
- 該当する1級の国家資格等を保有している
- 一般建設業の営業所技術者の要件を満たし、指導監督的実務経験がある
- 国土交通大臣の認定を受けている
指導監督的実務経験による場合には、発注者から直接請け負った4,500万円以上の建設工事について、2年以上、工事現場主任者や工事現場監督者などの立場で、工事の技術面を総合的に指導監督した経験が必要です。
単に4,500万円以上の工事に作業員や担当者として参加していたというだけでは足りません。元請として工事を請け負い、技術上の管理を指導監督する立場にあったことを証明する必要があります。
さらに、次の7業種は「指定建設業」とされており、特定営業所技術者を実務経験だけで満たすことはできません。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
これらの業種で特定建設業の許可を取得する場合には、原則として1級施工管理技士など、法令で定められた資格が必要です。
一般建設業の営業所技術者の要件を満たしていても、そのまま特定建設業の要件を満たすとは限りません。将来的に特定建設業への移行を考えている場合には、資格者の確保や育成を早い段階から進めることが重要です。
営業所技術者の要件を証明する方法
営業所技術者の要件を満たしていても、それだけで建設業許可を取得できるわけではありません。申請では、その要件を客観的な資料によって証明する必要があります。
国家資格によって要件を満たす場合は、資格証や合格証明書などを提出すれば足りることが多いため、比較的手続きはシンプルです。
これに対し、学歴や実務経験によって要件を満たす場合には、実務経験の内容や勤務実態を裏付ける資料を数多く準備しなければならず、ここでつまずくケースが少なくありません。
常勤性を証明する方法
営業所技術者は、営業所に常勤し、専らその職務に従事していることが必要です。
福島県の建設業許可申請の手引では、営業所技術者等証明書(様式第8号)に添付する常勤性確認資料として、主に次のような書類が示されています。
- 健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し
- 健康保険・厚生年金被保険者資格取得確認及び報酬決定通知書の写し
- 住民税特別徴収関係書類
- 法人税確定申告書(役員報酬等の内訳を含む)
- 雇用証明書
従来は健康保険被保険者証の写しを提出することが多くありましたが、健康保険証の廃止に伴い、現在はこれらの書類によって常勤性を確認する運用となっています。
また、別会社の代表取締役である場合や、他の法令で専任が求められる職務を兼ねている場合には、常勤性が認められないことがあります。
実務経験を証明する方法
実務経験によって営業所技術者の要件を満たす場合には、まず「実務経験証明書」を作成します。
そのうえで、福島県では実務経験の証明方法として、大きく「他者証明」と「自己証明」の二つに分けて取り扱われています。
| 区分 | 他者証明 | 自己証明 |
|---|---|---|
| 証明者 | 当時の勤務先など | 申請者自身 |
| 基本資料 | 実務経験証明書 | 実務経験証明書+工事資料 |
| 実務上の取扱い | 原則として証明書を中心に審査 | 工事資料による裏付けが重要 |
| 注意点 | 必要に応じ追加資料を求められることがある | 証明資料が不足すると認められないことがある |
他者証明
他者証明とは、過去に勤務していた建設会社などが、申請者の実務経験を証明する方法です。例えば、以前勤務していた建設会社が実務経験証明書を作成するケースがこれに当たります。
福島県では、このような他者証明については、原則として実務経験証明書によって審査されます。もっとも、内容に疑義がある場合や確認が必要な場合には、追加資料の提出を求められることがあります。
自己証明
自己証明とは、自分自身で実務経験を証明する方法です。例えば、個人事業主として施工していた期間や、会社の代表者が自社での経験を証明しなければならないケースでは、工事資料による裏付けが重要になります。
福島県では、証明期間全体について、次のような資料を提出することになります。
- 工事請負契約書
- 発注書と工事請書のセット
- 工事内容・工期・相手方が分かる資料
- 相手方からの入金が確認できる資料 など
証明したい工事について契約書や注文書に工期が記載されている場合は、実務経験の期間を確認しやすく、比較的スムーズに証明できることが少なくありません。
一方で、工期の記載がない契約書や請求書しか残っていない場合には、月ごとの請求書や入金資料などを組み合わせて、継続的に工事に従事していたことを説明しなければならないことがあります。
実際の申請では、この工期の有無によって準備の負担が大きく変わることがあります。
建設業許可業者で勤務していた場合
実務経験を証明する勤務先が建設業許可業者であった期間については、受付印のある変更届出書の表紙や工事経歴書などを利用できる場合があります。
また、当時その会社に在籍していたことを確認するため、健康保険被保険者証(当時有効だったもの)や厚生年金加入期間証明書などを提出することがあります。
これらは現在の常勤性を証明する資料とは目的が異なるため、混同しないよう注意が必要です。なお、具体的にどの資料を提出するかは、証明期間や個別事情によって異なります。申請前に管轄の建設事務所へ確認しておくと安心です。
営業所技術者が交代する場合の注意点
営業所技術者に変更があった場合は、変更の日から14日以内に、所轄の許可行政庁へ変更届を提出する必要があります。交代の際に特に注意したいのは、後任者が前任者と同じ業種の営業所技術者の要件を満たしているかという点です。
例えば、前任者が土木工事業、舗装工事業及び水道施設工事業の営業所技術者となっていたとしても、後任者が土木工事業の要件しか満たしていなければ、舗装工事業や水道施設工事業については営業所技術者が不在となってしまいます。
そのため、営業所技術者を交代させる際には、単に後任者を選ぶだけではなく、現在受けている許可業種すべてについて要件を満たしているかを事前に確認することが重要です。
また、営業所技術者は営業所ごとに常時配置しなければならない要件です。退職や異動などにより要件を満たす者がいなくなり、その状態が継続すると、建設業許可の要件を欠くことになります。
許可要件を欠いた状態を放置した場合には、監督処分の対象となり、最終的には許可の取消しにつながる可能性もあります。
そのため、営業所技術者が退職する予定がある場合や、高齢で近い将来の引退が見込まれる場合には、後任となる人材の育成や資格取得を早めに進めておくことが大切です。
建設業許可は取得することだけでなく、継続して要件を満たし続けることが重要です。営業所技術者についても、1人だけに依存するのではなく、将来を見据えた体制づくりを意識することをおすすめします。
建設業許可を取得し、維持していくために
営業所技術者(旧専任技術者)は、建設業許可の取得時だけでなく、許可を維持し続けるためにも欠かせない重要な要件です。
営業所技術者になるための方法は、「資格」「指定学科卒業後の実務経験」「実務経験」「第1次検定合格後の実務経験」など複数ありますが、実際の申請では、どの要件に該当するかだけでなく、それをどのような資料で証明するかが重要になります。
特に実務経験による申請では、工事資料や在籍資料が不足しているために、想定以上に時間がかかったり、追加資料を求められたりするケースも少なくありません。
また、営業所技術者が退職すると許可要件に影響することもあるため、1人だけに依存しない体制づくりも重要です。
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行政書士 佐藤勇太
