【相談事例】撤去工事には解体工事業の許可が必要か

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相談者:建設会社の経営者

建設工事に伴って、既存の設備や工作物を撤去する工事を依頼されました。

当社は専門工事業の建設業許可を受けていますが、解体工事業の許可は受けていません。「撤去工事」であれば、解体工事業の許可が必要なのでしょうか。

回答:行政書士

撤去工事だからといって、必ず建設業法上の「解体工事」に該当するわけではありません。

それぞれの専門工事で建設・設置される目的物について、その目的物だけを撤去・解体する工事は、原則としてその専門工事に該当します。例えば、管工事として設置された配管の撤去は管工事、鋼構造物工事として建設された鉄塔などの撤去は鋼構造物工事に該当します。

一方、建築物や工作物そのものを解体する場合には、解体工事に該当するかを確認する必要があります。また、総合的な企画・指導・調整のもとで建築物や土木工作物を解体する場合には、建築一式工事または土木一式工事に該当します。

そのため、「撤去」「解体」という工事名だけで業種を判断することはできません。何を撤去するのか、その目的物はどの専門工事で設置されたものか、工事全体としてどこまで請け負うのかを確認して業種を判断する必要があります。

※ 本記事の相談内容は、制度や実務上の論点を分かりやすく説明するために設定した想定事例です。

撤去工事は工事名だけでは業種を判断できない

建設業法では、建設工事を29種類に区分し、営業する業種ごとに建設業許可を受ける仕組みとなっています。国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」では、類似する工事について、どの業種に区分するのかという考え方が示されています。

撤去工事についても、「撤去」「取外し」「解体」などの工事名だけで業種を決めることはできません。主に次の点を確認します。

  • 何を撤去するのか
  • その目的物は、設置するときにどの専門工事に該当するのか
  • その目的物だけを撤去する工事なのか
  • 建築物や土木工作物を解体する工事なのか
  • 工事全体に総合的な企画・指導・調整が必要なのか

【図1 撤去工事の業種判定フロー】

※図は建設業法上の業種を判断する一般的な考え方を示したものです。実際の工事では、施工内容や請負範囲などを確認して個別に判断する必要があります。

専門工事の目的物だけを撤去する場合はその専門工事になる

国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、それぞれの専門工事で建設される目的物だけを解体する工事は、その専門工事に該当するとされています。

したがって、撤去するという施工方法だけを見るのではなく、撤去する目的物がどの専門工事によって建設・設置されるものなのかを確認することが重要です。

撤去するものを設置するときの業種から考える

代表的な撤去工事は、次のように考えることができます。

撤去する対象の例 建設業法上の業種の考え方
管工事として設置された敷地内の配管 管工事
電気工事として設置された電気設備 電気工事
内装仕上工事として施工された仕上材 内装仕上工事
鋼構造物工事として建設された鉄塔など 鋼構造物工事
とび・土工・コンクリート工事として設置された足場 とび・土工・コンクリート工事

ただし、「配管だから管工事」「鉄骨だから鋼構造物工事」と材料や名称だけで判断することはできません。まず、撤去する目的物を設置する工事がどの業種に該当するのかを確認します。

例えば、配管であっても、家屋その他の施設の敷地内の配管は管工事ですが、公道下等の下水道の配管工事は土木一式工事に区分されています。また、上水道等の取水・浄水・配水施設や下水処理場内の処理設備は水道施設工事に該当します。

上下水道に関する詳しい区分は、「上下水道工事|管工事・水道施設工事・土木一式工事の区別」で具体例を挙げて説明しています。

解体工事業の許可だけでは足りない

撤去する目的物が管工事に該当し、請負代金が軽微な建設工事の範囲を超える場合には、原則として管工事業の許可が必要です。解体工事業の許可が、管工事業や鋼構造物工事業など他の専門工事業の許可を兼ねるわけではありません。

建築一式工事以外では、1件の請負代金が500万円未満の工事は、原則として建設業許可を必要としない軽微な建設工事に当たります。建築一式工事については、1,500万円未満の工事または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事が軽微な建設工事とされています。

そのため、解体工事業の許可がないから撤去工事を請け負えないとは限らない一方、解体工事業の許可があれば、どのような撤去工事でも請け負えるわけでもありません。撤去する目的物に応じて、必要となる許可業種を確認する必要があります。

なお、許可を受けた業種の主たる工事を施工するために、別の業種に当たる撤去工事が必要となる場合には、建設業法第4条の附帯工事に該当することがあります。

建設業許可事務ガイドラインでは、附帯工事について、主たる建設工事の施工によって必要となる従たる工事や、主たる工事を施工するために必要となる従たる工事で、それ自体が独立した使用目的に供されない工事としています。

なお、附帯工事を自社で施工する場合には、軽微な建設工事を除き、建設業法第26条の2第2項に基づく技術者の配置についても確認する必要があります。

工作物の解体は工事内容によって業種が変わる

昭和47年建設省告示第350号では、解体工事の内容を「工作物の解体を行う工事」としています。また、建設業許可事務ガイドラインの別表では、解体工事の例として「工作物解体工事」が示されています。

ただし、総合的な企画・指導・調整のもとで建築物や土木工作物を解体する場合には、それぞれ建築一式工事または土木一式工事に区分されます。

建物そのものの解体と設備だけの撤去は異なる

例えば、工場建屋そのものを取り壊す工事と、工場内に設置された配管だけを撤去する工事では、工事目的物が異なります。

管工事として設置された配管だけを撤去する場合は管工事ですが、建物そのものを取り壊す場合には解体工事に該当するかを確認します。また、鋼構造物工事として建設された鉄塔など、その目的物だけを撤去する場合は鋼構造物工事に該当します。

このように、同じ「撤去」という作業でも、何を工事目的物として請け負うのかによって業種が変わります。

総合的な企画・指導・調整を伴う解体は一式工事になる

建築物や土木工作物を解体する工事であっても、必ず解体工事に該当するわけではありません。

建設業許可事務ガイドラインでは、総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ土木一式工事または建築一式工事に該当するとされています。

したがって、建築物を取り壊すという事実だけから解体工事業と判断することもできません。工事の内容や施工体制などを踏まえ、工事全体として総合的な企画・指導・調整を必要とする工事なのかを検討する必要があります。

建設業法と建設リサイクル法では「解体工事」の範囲が異なる

建設業法上の29業種としての「解体工事」と、建設リサイクル法上の「解体工事」は、同じ言葉でも範囲が同じではありません。

建設業法では、工作物を解体する工事であっても、それぞれの専門工事で建設される目的物だけを解体する場合は、その専門工事に区分されます。

一方、建設リサイクル法では、建築物のほか、鉄塔など建築物以外の工作物についても、その全部または一部を取り壊す工事を「解体工事」としています。国土交通省の「建設リサイクル法質疑応答集(案)」では、形鋼や鋼板などを加工・組み立てた工作物も「建築物以外の工作物」に含まれると説明されています。

そのため、例えば鉄塔だけを撤去する工事は、建設業法上は鋼構造物工事に該当する一方、建設リサイクル法上は解体工事に該当することがあります。

このように、撤去工事では、建設業法上どの業種に該当するかを判断したうえで、建設リサイクル法上の取扱いも別に確認する必要があります。

解体工事に該当しても登録が必要とは限らない

また、同質疑応答集では、建築物や工作物を除却するために行う解体工事が解体工事業者登録の対象となる一方、主たる他の工事に伴う附帯工事として解体工事を行う場合には、登録を要しないとされています。

解体工事を含む工事を請け負う場合の登録については、元請か下請か、また解体部分を自社で施工するかどうかだけで判断するものではありません。工事を請け負う段階で、建設リサイクル法上の解体工事業に当たるかを確認する必要があります。

福島県の「解体工事業の登録」でも、解体工事業を営む場合には請負金額にかかわらず、解体工事を行う場所の都道府県知事の登録が必要であり、土木工事業、建築工事業または解体工事業のいずれかの建設業許可を有する場合には登録を要しないと案内しています。

鋼構造物工事業、管工事業、電気工事業などの許可は、この登録免除の対象となる3業種には含まれていません。

したがって、建設業法上は鋼構造物工事や管工事などの専門工事として施工できる撤去工事であっても、建設リサイクル法上の解体工事に該当する場合には、解体工事業者登録の要否を別に確認する必要があります。

建築一式工事以外の建設工事では、500万円未満が軽微な建設工事の基準となっていますが、解体工事業者登録にはこの金額基準はありません。この違いにも注意が必要です。

まとめ:撤去工事は業種と登録を分けて確認する

撤去工事を請け負うときは、まず建設業法上どの業種に該当するかを判断し、その業種について必要な建設業許可を確認します。そのうえで、建設リサイクル法上の解体工事に該当する場合には、解体工事業者登録の要否を別に確認する必要があります。

「撤去」「解体」という工事名だけで判断すると、必要な許可業種や登録を誤るおそれがあります。何を撤去するのか、その目的物はどの業種で設置されるものか、工事全体としてどこまで請け負うのかを確認して判断することが重要です。

 

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