
「営業所技術者が退職するため、資格を持つ従業員へ交代させたい」。このような場合、後任者を決めて変更届を提出すれば、それだけで手続が終わるとは限りません。
営業所技術者等は、営業所ごとに、その営業所で取り扱う許可業種に対応して配置する必要があります。後任者が一部の業種しか担当できない場合や、従たる営業所に後任者を置けない場合には、許可業種の変更や営業所の廃止まで考えなければなりません。
また、営業所技術者等は切れ目なく配置する必要があります。この記事では、交代時の判断手順、後任者を配置できない場合の対応、届出期限について解説します。
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営業所技術者等の交代は許可の維持に関わる
一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」を営業所ごとに置く必要があります。この記事では、両者を合わせて「営業所技術者等」と表記します。
営業所技術者等は、会社全体に1人いればよいものではありません。それぞれの営業所に常勤し、その営業所で取り扱う許可業種について、資格や実務経験などの要件を満たす必要があります。
したがって、営業所技術者等の交代は、単なる人事異動ではありません。後任候補者の持つ資格などによって、許可を維持できる範囲が変わる重要な手続きとなります。
後任者が担当できる許可業種を把握する
前任者が複数の許可業種を担当していた場合、後任候補者がそのすべてを引き継げるとは限りません。資格の種類や級、実務経験の内容によって、担当できる業種が異なるためです。
まず、前任者が担当している業種と、後任候補者が担当できる業種を照合します。詳しい要件と証明方法は、営業所技術者(専任技術者)の要件と証明方法を行政書士が解説をご覧ください。
すべての業種を引き継げるケース
後任候補者が前任者の担当業種をすべて引き継げる場合は、通常の交代手続を進めます。営業所技術者等は役員である必要はなく、要件を満たす従業員を後任者とすることもできます。
ただし、資格や実務経験の要件を満たすだけでなく、変更後にその営業所へ常勤することも必要です。他の会社で勤務を続ける人や、別の営業所の営業所技術者等となっている人を、そのまま後任者として配置することはできません。
一部の業種しか引き継げないケース
一方、後任候補者が一部の業種しか担当できない場合は、別の技術者を加え、複数人で許可業種を分担する方法があります。それでも担当者を配置できない業種が残るときは、その営業所で取り扱う許可業種を減らす対応が必要です。
他の営業所から異動させるケース
別の営業所に配置している営業所技術者等を、後任者として異動させる方法もあります。ただし、営業所技術者等は複数の営業所を兼ねることができないため、異動後は異動先の営業所に専任で配置されます。
そのため、異動日以後は、異動元の営業所技術者等ではなくなります。異動元でも建設業の営業を続ける場合は、異動と同時に別の後任者を配置し、不在となる期間を生じさせないことが必要です。
出向者を後任者とするケース
ところで、出向者でも、技術者要件を満たし、出向先の営業所に常勤して専ら職務に従事できれば、後任者として配置できる可能性があります。ただし、出向契約を締結すれば足りるものではありません。
出向先での勤務状況、給与の支払状況、人事権の所在などから、常勤性と専任性が判断されます。出向者を配置する場合は、開始日を決める前に管轄の建設事務所へ相談することが適切です。
最終的には、資料と勤務実態を踏まえて許可行政庁が判断します。そのため、後任者としての配置が認められることを見込んで、先に出向日程だけを決めることは避けた方がよいでしょう。
後任者を置けない場合は対応が分かれる
後任候補者がいたとしても、前任者の担当業種をすべて引き継げるとは限りません。後任者を配置できない業種や営業所が残る場合は、その範囲に応じて対応が分かれます。
| 後任者の状況 | 主な対応 |
|---|---|
| すべての業種を担当できる | 営業所技術者等を変更する |
| 一部の業種だけ担当できる | 複数人で分担するか、その営業所の業種を減らす |
| 従たる営業所に配置できない | 人員を異動させるか、従たる営業所を廃止する |
| 会社全体で該当業種を担当できない | 必要な届出を行い、該当業種を廃業する |
その営業所の許可業種を減らすケース
他の営業所では要件を満たしているものの、退職者がいた営業所だけで担当者を配置できない場合は、その営業所から該当業種を外す方法があります。この場合は、営業所で取り扱う建設業の種類と、営業所技術者等の担当業種を変更します。
他の営業所に該当業種を担当できる営業所技術者等がいれば、会社全体ではその業種の許可を維持できます。反対に、どの営業所にも担当者を配置できなければ、その業種の許可を維持することはできません。
従たる営業所を廃止するケース
従たる営業所に後任者を配置できず、今後その営業所で建設業の営業を行わない場合は、営業所自体を廃止する方法があります。ただし、従たる営業所の廃止だけを届け出ればよいわけではありません。
様式第22号の2による営業所廃止の届出に加え、その営業所の代表者である令3条使用人についても削除の届出が必要です。さらに、その営業所に配置していた営業所技術者等を削除する場合は、様式第22号の3を提出します。
ただし、その人が別の営業所または別の許可業種で引き続き営業所技術者等となる場合は、様式第22号の3による削除ではなく、様式第8号による変更として届け出ます。それぞれ提出期限が異なるため、廃止日を決める前に必要な書類を把握しておくことが重要です。
会社全体で後任者を置けないケース
いずれの営業所にも該当業種を担当できる営業所技術者等を配置できなければ、その業種について許可要件を満たせなくなります。この場合は、建設業法第11条第5項に基づく届出書である様式第22号の3と、該当する許可業種の廃業届を提出することになります。
前任者の削除だけを届け出て、該当業種の許可を維持することはできません。後任者を配置できないことが分かった場合は、前任者の退職前に必要な届出と廃業の範囲を確認し、期限内に手続を進める必要があります。
届出期限は変更内容によって異なる
後任者を配置できるかどうかによって、通常の変更届で済む場合と、営業所や許可業種の変更まで必要になる場合に分かれます。そして、必要な手続が変われば、提出期限も変わります。
| 変更の内容 | 提出期限 |
|---|---|
| 営業所技術者等の変更・追加・削除 | 変更または削除後2週間以内 |
| 営業所技術者等を欠いた場合 | 要件を欠いた日から2週間以内 |
| 令3条使用人の変更・削除 | 変更または削除後2週間以内 |
| 従たる営業所の廃止 | 変更後30日以内 |
| 営業所で取り扱う建設業の種類の変更 | 変更後30日以内 |
| 建設業の全部または一部の廃業 | 廃業した日から30日以内 |
例えば、従たる営業所を廃止する場合、営業所廃止の届出は30日以内ですが、その営業所の営業所技術者等を削除する様式第22号の3と、令3条使用人の削除に関する届出は2週間以内です。すべての書類をまとめようとしているうちに、2週間の期限を過ぎないよう注意しなければなりません。
また、該当業種を廃業する場合には、営業所技術者等を欠いたことに関する届出と廃業届の両方が必要です。それぞれの期限を踏まえ、早めに相談することが適切です。
変更届全般の期限は、建設業許可取得後に必要な変更届と提出期限を行政書士が解説をご覧ください。福島県の提出方法と最新様式は、県の既に建設業の許可を受けている方へで見ることができます。
2週間は後任者を探すための期間ではない
ここで注意したいのは、変更後2週間以内という期限の意味です。この2週間は、前任者が退職した後に後任者を探すための期間ではありません。
営業所技術者等は、前任者から後任者へ切れ目なく交代させる必要があります。前任者が営業所技術者等でなくなった後、後任者の配置までに空白があれば、その期間は許可要件を満たしていない状態になります。
例えば、前任者が3月31日まで営業所技術者等として勤務する場合は、後任者を4月1日から配置するなど、空白が生じない日程を組む必要があります。変更後2週間以内という期限は、この交代の事実を届け出る期限です。
したがって、退職、異動、出向の開始日を先に決めるのではなく、後任者の要件と常勤開始日を見た上で日程を決めることが重要です。その後、実際の変更日を基準として、期限内に届出を行います。
営業所技術者等の交代は退職前にご相談を
営業所技術者等の交代では、後任候補者が資格を持っているかだけでなく、その資格で担当できる許可業種、配置先での常勤性、他の営業所への影響まで把握しておく必要があります。
後任者を配置できなければ、営業所の許可業種を減らす、従たる営業所を廃止する、該当業種を廃業するなど、通常の交代とは異なる手続も必要です。
当事務所では、後任候補者が担当できる業種や常勤性の検討、変更届の作成・提出、補正対応を行っています。後任者を配置できない場合は、営業所や許可業種への影響も踏まえて対応します。
退職後に対応を始めると、すでに許可要件を欠いていたり、選択できる方法が限られたりすることがあります。営業所技術者等の退職や異動を予定している建設会社様は、退職日や異動日を確定する前に当事務所へご相談ください。




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行政書士 佐藤勇太
