
「建設会社の事業を別会社へ譲渡することになった」「会社を合併する予定がある」「建設部門を会社分割で別会社へ移したい」。このような場合、会社法上の手続きとあわせて、現在の建設業許可をどうするかも検討する必要があります。
中小企業では、経営者の高齢化や後継者問題への対応だけでなく、事業の成長や再編を目的として事業承継やM&Aを活用する場面もあります。2026年版中小企業白書でも、事業承継・M&Aは中小企業が付加価値を高めるための取組の1つとして位置付けられています。
建設業法には、事業譲渡、合併、会社分割の際に、建設業者としての地位を承継する認可制度があります。この記事では、承継認可の仕組みと注意点を説明したうえで、福島県知事許可業者が手続きを進める際の取扱いについて解説します。
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事業譲渡・合併・会社分割で建設業許可を承継できる
2020年10月1日から、事業譲渡、合併、会社分割について、建設業者としての地位を承継する制度が設けられています。事業承継を行う前に認可を受けることで、承継日に被承継人の建設業者としての地位を承継できます。
改正前は、事業譲渡等によって経営主体が変わる場合、建設業法上、従前の許可をそのまま承継する制度はなく、承継する側が新たに許可を受ける必要がありました。全国的には、新しい許可を取得するまで建設業を営むことができない空白期間が生じることが制度上の課題とされていました。
国土交通省では、事業譲渡、合併、会社分割を一括して「事業承継」として認可基準を定めており、事業承継認可の仕組みを次のように示しています。

(出典:国土交通省『建設業者の地位の承継について』)
承継するのは許可に係る建設業の全部
承継認可を利用する場合、被承継人が許可を受けている建設業の一部だけを選んで承継することはできません。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでも、許可を受けている建設業の全部を承継することが認可基準として示されています。
たとえば、土木工事業、建築工事業、舗装工事業、造園工事業の4業種について許可を受けている会社から、「土木工事業と舗装工事業だけを許可とともに承継する」という方法は取れません。
同じ業種で一般・特定が異なる場合は事前の対応が必要
承継元と承継先の双方が建設業許可を受けている場合には、許可業種だけでなく一般建設業と特定建設業の区分も照合する必要があります
たとえば、承継元が鉄筋工事業の特定建設業許可を受け、承継先が同じ鉄筋工事業について一般建設業許可を受けている場合、その状態のまま地位を承継することはできません。一般と特定を逆にした場合も同様です。
国土交通省の資料では、承継できるケースと承継規定の対象外となるケースが、次のように示されています。

(出典:国土交通省『建設業者の地位の承継について』)
この場合、承継元または承継先のどちらかが、該当する許可を承継前に一部廃業することで承継できるケースがあります。福島県の手引でも、同一業種について一般・特定が異なる場合に、事前の一部廃業によって承継する例が示されています。
一般建設業と特定建設業の違いについては、関連記事「特定建設業許可の要件と「般特新規」手続きを行政書士が解説」で詳しく説明しています。
認可申請先は承継の内容によって異なる
承継認可の申請先は、通常の建設業許可における知事許可・大臣許可とは判定の仕方が異なります。事業譲渡であれば、譲渡人と譲受人が現在どの許可を受けているかによって、国土交通大臣または都道府県知事のどちらへ申請するかが決まります。
主なケースは次のとおりです。合併や会社分割では複数の法人が関係することがあるため、実際の申請先は個別に判定します。
| 事業譲渡の主なケース | 認可行政庁 |
|---|---|
| 譲渡人が福島県知事許可、譲受人が無許可 | 福島県知事 |
| 譲渡人・譲受人とも福島県知事許可 | 福島県知事 |
| 譲渡人が国土交通大臣許可 | 国土交通大臣 |
| 譲受人が国土交通大臣許可 | 国土交通大臣 |
| 譲渡人・譲受人に異なる都道府県の知事許可業者が含まれる | 国土交通大臣 |
福島県の手引では、承継人・被承継人のすべてが福島県知事許可業者である場合、または事業承継後に建設業を営む営業所が福島県内のみとなる場合を、福島県知事へ認可申請できるケースとして示しています。
なお、国土交通大臣へ認可申請する場合で、承継人または被承継人に福島県知事許可業者が含まれるときは、福島県知事への届出も必要です。
承継後の役員・技術者体制を事前に検討する
承継認可の審査では、一般建設業であれば建設業法7条・8条、特定建設業であれば8条・15条の許可基準が適用されます。そのため、承継後の会社が必要な許可要件を満たす体制になっていることが前提となります。
実務上重要なのは、許可要件そのものを証明することより、承継日以後に誰がどの役割を担うのかを事前に決めることです。事業譲渡や会社再編によって役員や従業員が移る場合には、常勤役員等や営業所技術者等の配置も変わることがあります。
承継後の常勤役員等、営業所技術者等、営業所の構成、社会保険の加入状況、財産的基礎などを点検し、承継日に許可要件を満たす体制を作っておく必要があります。
国土交通省の手引でも、認可申請書は承継日時点の状態で作成し、承継者がその時点で許可要件を備えることを求めています。
公共工事を受注している会社では、建設業許可とは別に、経営事項審査や入札参加資格についても検討が必要です。本記事では建設業許可の承継に焦点を置くため、経審等の手続きについては詳しく扱いません。
福島県では承継予定日の30日前までに申請する
ここからは、福島県知事へ承継認可を申請する場合の取扱いです。福島県は、認可申請について個別に事情を把握する必要があるとして、なるべく早い段階で所管建設事務所へ事前相談するよう案内しています。
事前相談を済ませたうえで、承継予定日の30日前までに認可申請を行います。この30日の計算では土日祝日等の休日を除き、福島県は期限を過ぎた申請について「受付けることができません」と明記しています。
そのため、「事業譲渡契約を締結してから建設業許可を考える」「合併日を決めてから認可申請の準備を始める」という順序では、予定した承継日に間に合わない可能性があります。
事業譲渡等の日程を具体化する段階から、建設業許可の手続きも並行して検討した方が安心です。
また、福島県の手引では、新設合併・新設分割を除いて法人設立後でなければ申請できないとされています。新設した法人を承継人とする場合には、法人設立と認可申請、承継予定日の順序を踏まえて日程を組む必要があります。
認可と廃業届・新規申請では取扱いが異なる
承継認可を利用せず、被承継人の廃業届と承継人の新規許可申請を同時に提出する方法もあります。福島県は、この方法について、許可番号は新しい番号になるものの、許可の空白期間は発生しないと案内しています。
一方、承継認可では、承継人が建設業許可を持っていない場合は被承継人の許可番号を使用します。承継人がすでに建設業者である場合には、自身の許可番号または被承継人の許可番号のいずれかを選択できます。
両者の主な違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 承継認可 | 廃業届+新規申請 |
|---|---|---|
| 許可の空白期間 | 生じない | 福島県では同時提出なら生じない |
| 許可番号 | 被承継人の番号を使用。
承継人が既に許可業者の場合はいずれかを選択可 |
新しい番号になる |
| 申請手数料 | 無料 | 9万円 |
| 手続き | 承継認可申請 | 廃業届+新規許可申請 |
このため、両方の方法で空白期間を避けられるとしても、効果が同じというわけではありません。許可番号を引き継ぐ必要性、現在の許可内容、承継後の体制、費用などを踏まえて、どちらの方法で進めるかを検討することになります。
承継後の許可期間は承継の日から5年間
福島県の手引では、事業譲渡・合併・会社分割による承継後の許可期間について、承継の日から5年間としています。既存の許可の残存期間をそのまま引き継ぐ取扱いではありません。
福島県における申請期限、申請様式、受付窓口などは、福島県の「建設業許可の事業承継等及び相続に係る認可申請について」で公表されています。
事業譲渡等の日程を決める前に建設業許可を点検する
事業譲渡、合併、会社分割では、会社の登記や税務に関する手続きも並行します。必要に応じて司法書士や税理士などの関係専門家と連携しながら、当事務所では建設業許可の承継部分を担当します。
当事務所では、承継元・承継先の建設業許可の内容を把握し、許可業種や一般・特定の区分、承継後の体制、申請時期を点検したうえで手続きを進めます。行政書士本人が案件の検討から福島県への事前相談、認可申請まで一貫して対応します。
建設会社の事業譲渡、合併、会社分割を予定している場合は、承継日を確定する前の段階からご相談ください。現在の許可内容と予定している事業承継の方法を踏まえ、建設業許可の承継手続きを検討させていただきます。




事務所横に1台分の駐車場をご用意しております。
行政書士 佐藤勇太
