経営事項審査の社会性等W点と加点項目を行政書士が解説

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経営事項審査のW点は、建退共、退職金制度、防災協定、建設業経理士等、建設機械など、会社の取組によって点数を上げられる評価項目です。

現在すでに加点対象となる項目を漏れなく申請するだけでなく、資格取得や制度整備、人材育成を計画的に進めることで、数年先の点数を高めることもできます。

経審の直前になってからでは間に合わない項目もあります。すべてを単年度で改善しようとせず、会社に必要な取組と結び付けながら、来年以降のW点を中長期的に高めていくことが大切です。

W点は8つの項目から会社の取組を評価する

W点は、経営事項審査の「その他の審査項目(社会性等)」を評価する点数です。総合評定値Pに占めるウェイトは15%で、令和8年7月1日以降の申請では、W評点の最高は2,073点、最低は▲788点です。

W1からW8までには、まず換算前の点数が付けられます。以下では分かりやすく、換算前を「素点」、換算後を「W評点」として説明します。

【表1】W1~W8の評価項目

区分 主な評価内容 素点の最低・最   高
W1 担い手の育成・確保 0~77
W2 営業継続 ▲60~60
W3 防災活動への貢献 0~20
W4 法令遵守 ▲30~0
W5 建設業の経理 0~30
W6 研究開発 0~25
W7 建設機械 0~15
W8 ISO等の認証・登録 0~10

素点の合計は最高237点です。これを所定の方法でW評点へ換算し、その15%が総合評定値Pに反映されます。目安として、素点1点はP約1.3点に相当します。

防災協定の20点ならP約26点、建退共・退職金制度・法定外労災の45点ならP約59点に相当するため、W点はPにも一定の影響があります。

令和8年7月1日以降の申請では、社会保険加入3項目の削除、自主宣言制度の新設、CCUSの配点変更、建設機械の対象拡大が行われました。現在の評価項目と改正内容は、国土交通省の「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」でも確認できます。

W1では人材の確保や育成に関する取組が評価される

W1は最大77点で、会社が計画的に取り組める項目が多く含まれています。点数だけを目的に制度へ加入するのではなく、従業員が安心して働き、技術や技能を高められる会社づくりと合わせて考えたい部分です。

建退共・退職金・法定外労災はそれぞれ15点

建設業退職金共済制度への加入、退職一時金または企業年金制度の導入、法定外労働災害補償制度への加入は、それぞれ15点です。3項目で45点になるため、現在加入している制度が加点要件を満たしているか確認する価値があります。

ただし、加入していれば必ず加点されるわけではありません。建退共では制度を適正に履行していること、法定外労災では補償対象や補償内容など所定の要件を満たす必要があります。

そのため、未加入の場合には、従業員の福利厚生や定着につながるかという観点からも、導入を検討するとよいでしょう。

若手の育成やCPD、働きやすい職場づくりも評価される

W1では、35歳未満の若年技術職員等の育成・確保が最大2点、知識や技術・技能を高める取組が最大10点です。CPDとは、技術者が講習や研修などを通じて継続的に知識・技術を高め、その実績を単位として蓄積する仕組みです。

ワーク・ライフ・バランスに関する認定も最大5点の対象です。仕事と家庭生活の両立や女性・若者が働きやすい職場づくりに関する認定で、えるぼし、くるみん、ユースエールなどが対象となり、認定の種類や段階によって2点から5点まで配点が異なります。

CCUS(建設キャリアアップシステム)は、技能者の資格や就業履歴などを登録・蓄積する仕組みです。

審査対象となる元請工事について、民間工事を含むすべての建設工事で必要な措置を実施した場合は10点、すべての公共工事で実施した場合は5点となります。対象工事の一部だけで実施しても、この加点は受けられません。

令和8年7月からは「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」も5点の加点項目となりました。宣言しただけで加点されるものではなく、宣言した取組を行う旨などを誓約する必要があります。

これらの事項は、若手の採用、教育、処遇改善、働きやすい職場づくりを継続して進めることで評価につながる項目です。その取組はW点だけでなく、職人や若手に選ばれる会社づくりにもつながります。

営業年数・防災協定・法令遵守もW点に影響する

W2からW4には、短期間では変えにくい項目と、現在の状況を確認すれば加点につながる項目があります。特に防災協定は20点と大きいため、地域の建設業者は確認しておきたい項目です。

営業年数は35年以上で60点になる

建設業の営業年数は6年以上から加点され、35年以上で60点になります。通常は建設業の許可または登録を受けた時から審査基準日までの期間で算定するため、短期間で増やせる点数ではありません。

ただし、一定の組織変更、法人成り、事業承継や建設業の譲受けでは、従前の許可・登録時を起算点として扱える場合があります。会社の形を変更する場合には、許可の承継だけでなく、経審上の営業年数への影響も確認する必要があります。

なお、一定の民事再生・会社更生の手続中はW2で▲60点となり、手続終結後は営業年数をゼロ年から計算し直す取扱いがあります。

防災協定は20点の加点になる

国や地方公共団体などとの防災協定に基づく活動が評価される場合は20点の加点です。自社が直接協定を締結していなくても、加入している建設業団体等が協定を締結し、自社が防災活動で一定の役割を担うことを証明できれば対象になります。

建設業団体に加入している会社は、自社名義の協定書がないという理由だけで対象外と判断せず、所属団体へ確認しておくとよいでしょう。

法令遵守では指示処分・営業停止処分が減点対象になる

W点には減点項目もあります。審査対象年に建設業法による指示処分を受けた場合は▲15点、営業停止処分を受けた場合は▲30点です。両方に該当しても▲45点とはならず、W4の減点は最大▲30点となります。

経理体制・建設機械・認証でもW点を上げられる

W5からW8にも、会社の取組によって将来の加点を目指せる項目があります。自社に関係するものを選び、費用や本業上の効果も考えながら計画することが重要です。

建設業経理士等は計画的な資格取得を検討できる

W5では、監査の受審状況が最大20点、公認会計士や登録経理試験合格者等の人数が最大10点評価されます。建設業経理士等の資格者が社内にいない場合には、従業員の資格取得を会社が支援することで、将来の加点につなげることができます。

必要な資格者数は完成工事高の規模によって異なり、規模が小さい会社ほど少ない人数で加点に届く仕組みです。例えば、年間平均完成工事高が1億円未満の会社では、2級登録経理試験合格者等が1人いれば、この人数評価は10点になります。

一方、一定の1級資格者は、社内で経理処理の適正を確認する評価にも関係します。1級と2級では経審上の「重み」が異なるため、自社の規模と将来の経理体制を考えながら資格取得を進めることが重要です。

建設機械は対象機械と検査要件を確認する

W7では対象となる建設機械を1台保有する場合に5点が加点され、14台以上で最大15点です。1台でもP約6.6点に相当するため、すでに対象機械を保有している会社は確認しておく価値があります。

令和8年7月から不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが加わり、現在は11種類が対象です。

 

(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」5ページを加工して作成)

 

ただし、移動式クレーンはつり上げ荷重3トン以上、高所作業車は作業床の高さ2メートル以上など、機械ごとに要件があります。

また、ダンプであっても、自動車検査証に「積載物は土砂等以外のものとする」などの記載があり、土砂等の運搬が制限されている車両は対象になりません。

所有だけでなく、審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められたリース契約も対象になります。福島県で申請する際の現行様式や記載例は、福島県の「経営事項審査申請様式等ダウンロード」で確認できます。

W点を上げるためだけに必ずしも高額な機械を購入する必要はありません。まずすでに所有・リースしている機械を確認し、今後業務上必要な設備投資を行う際に、経審の対象機械かどうかも確認するという考え方が現実的です。

W6の研究開発は最大25点ですが、会計監査人設置会社などが対象となるため、中小建設業者では該当する場面が限られます。

W8ではISO9001、ISO14001、エコアクション21などの認証が評価されますが、経審だけを目的に取得するのではなく、本業上の必要性や維持負担も含めて検討するとよいでしょう。

次回の審査基準日から逆算してW点対策を考える

W点対策では、現在すでに加点できるもの、次回の審査基準日までに準備できるもの、数年かけて会社として取り組むものを分けて考えると整理しやすくなります。経審の申請直前になって初めて確認するのではなく、決算や人材育成の計画と合わせて準備することが重要です。

【表2】W点を上げるために会社で検討できる取組

評価項目 現在確認すること 今後計画できること
建退共・退職金・法定外労災 加入状況と加点要件 制度の導入・整備
若年者・CPD 対象者・取得状況 採用、育成、継続研修
WLB関係認定 認定状況 働きやすい職場づくり
防災協定 所属団体の協定 防災活動への参加
建設業経理士等 社内資格者 資格取得の支援
建設機械 所有・リース状況 設備投資時に対象を確認
ISO等 認証状況 必要性を踏まえた取得

すべての項目を単年度で改善する必要はありません。福利厚生、人材育成、経理体制、防災活動、設備投資など、会社にとって必要な取組を1つずつ進め、その結果としてW点も高くなる形が望ましいと考えます。

特に人材に関する取組は、経審の点数にとどまるものではありません。退職金制度や労災補償、教育、働きやすい環境を整えることは、職人や若手が長く働きたいと思える会社づくりにもつながります。

経営事項審査のご相談は当事務所へ

経営事項審査では、現在の会社の状況を正しく点数に反映させることに加え、次回以降の審査を見据えて準備することも重要です。

当事務所では、福島県の経営事項審査の申請を承っております。ご依頼いただいた際には、現在のW点を含む評価項目を確認し、今回の申請で加点できる項目だけでなく、資格取得や制度整備などによって今後点数を伸ばせる余地も検討します。

経審を毎年受ける会社だからこそ、今回の申請だけで終わらせず、次回以降を見据えて準備していくことが大切です。

これから経審を受ける場合や、次回以降の点数についても考えながら準備したい事業者の方は、当事務所の「福島県で経営事項審査を受けたいとお考えの方へ」をご参照ください。

 

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