
営業所技術者として営業所に置いている技術者を、同じ営業所で契約した工事の主任技術者として現場にも配置したい。このような場合、「営業所の技術者が現場に出てもよいのか」と迷うことがあります。
営業所技術者は、原則として営業所の職務に従事します。ただし、一定の条件を満たせば、主任技術者を兼任することができます。専任を要する工事かどうか、営業所と現場が近接しているかによって、適用される要件は異なります。
この記事では、主任技術者を兼任するための共通条件から、工事ごとの要件、遠方の工事を受注する際の注意点までを解説します。両者の役割の違いについては、「主任技術者・監理技術者と営業所技術者等の違いを解説」も併せてご覧ください。
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営業所技術者は一定の条件で主任技術者を兼任できる
営業所技術者は、建設業の許可を受けた営業所に常勤し、その営業所における請負契約を技術面から支える者です。原則として営業所の職務に従事しますが、要件を満たす工事については主任技術者を兼任できます。
兼任できる工事は、次の3つに分かれます。この3つの取扱いを併用することはできないため、対象工事がどれに当たるかを最初に確認します。
| 工事の区分 | 兼任の考え方 |
|---|---|
| 営業所に近接する非専任工事 | 営業所と現場の双方で職務を行える場合 |
| 営業所に近接しない非専任工事 | 移動時間や現場体制などの要件を満たす場合 |
| 主任技術者の専任を要する工事 | 請負代金を含む要件を満たす1現場 |
主任技術者を兼任するための共通条件
営業所と現場の距離や請負代金を確認する前に、すべての兼任に共通する条件を確認します。次の条件を満たさなければ、移動時間や情報通信機器などの要件を備えても兼任できません。
| 確認する事項 | 内容 |
|---|---|
| 契約した営業所 | 営業所技術者等を置く営業所で契約した工事であること |
| 技術者の要件 | 対象業種の主任技術者となる資格または実務経験があること |
| 雇用関係 | 建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること |
| 職務の遂行 | 営業所と現場の双方で必要な職務を実際に行えること |
たとえば、本店の営業所技術者が、支店で契約した工事の主任技術者を兼任することはできません。また、土木工事業の営業所技術者であっても、管工事の主任技術者となる要件を満たしていなければ、管工事の現場には配置できません。
その工事は主任技術者の専任が必要か
共通条件を満たした後は、その工事が主任技術者の専任を要する工事かを確認します。専任の有無によって、営業所技術者が兼任するための要件が変わります。
公共性のある施設や多数の人が利用する施設などに関する工事では、請負代金が4,500万円以上、建築一式工事では9,000万円以上となる場合、主任技術者または監理技術者の専任が必要です。
公共工事だけでなく、事務所、工場、共同住宅、ホテルなどの民間工事も対象になることがあります。
営業所に近接する非専任工事を兼任する場合
主任技術者の専任を要しない工事で、営業所と工事現場が近接している場合には、営業所技術者等が主任技術者を兼任できることがあります。
この場合、「営業所から何km以内」という全国一律の基準は示されていません。現場の職務に従事しながら営業所の職務も実際に行える位置関係にあり、営業所と常時連絡できる体制が必要です。
同じ市町村内にあるという理由だけで兼任できるとは限りません。工事内容、移動時間、現場に出向く頻度などを踏まえ、営業所と現場の双方で職務を果たせるかを確認します。
営業所から離れた非専任工事を兼任する場合
2024年12月13日以降は、営業所と現場が近接していない非専任工事についても、一定の要件を満たせば兼任できるようになりました。
非専任工事であっても、営業所から遠方にある場合は、片道おおむね2時間以内という要件が適用されます。主な要件は次のとおりです。(国土交通省)
| 項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 兼任する現場 | 1工事現場まで |
| 移動時間 | 1日の勤務時間内に巡回でき、片道おおむね2時間以内 |
| 下請次数 | 自社が注文者となる下請契約から数えて3次まで |
| 連絡員 | 工事現場に連絡員を置く |
| 施工体制の把握 | 現場作業員の入退場などを遠隔で確認できること |
| 現場状況の把握 | 映像と音声を送受信できる通信環境を設けること |
| 配置計画書 | 作成し、現場への備置きと営業所での保存を行うこと |
移動時間は、その工事で通常利用し、確実に実施できる自動車などの移動手段を前提に判断します。例外的な交通手段を仮定して、片道おおむね2時間以内と扱うものではありません。
専任を要する工事を兼任する場合
主任技術者の専任を要する工事でも、請負代金が1億円未満、建築一式工事では2億円未満であり、移動時間、下請次数、連絡員、情報通信技術、配置計画書などの要件を満たせば、営業所技術者等が主任技術者を兼任できます。
ただし、営業所技術者等が兼任できる専任工事は1現場までです。工事途中の増額により請負代金が上限以上となった場合は、この兼任制度を利用できなくなります。
なお、専任特例1号とは、一定の要件を満たす場合に、主任技術者または監理技術者が2つまでの工事現場を兼任できる制度です。これに対し、営業所技術者の兼任は「営業所と1現場」であり、専任特例1号を重ねて別の現場を担当することはできません。
営業所技術者等が兼任できない主なケース
営業所技術者等を主任技術者として配置できない主なケースは、次のとおりです。公共工事では、入札公告や特記仕様書などに定められた技術者の配置条件も確認する必要があります。
| 主なケース | 兼任できない理由 |
|---|---|
| 別の営業所で契約した工事 | 契約営業所の要件を満たさない |
| 対象業種の要件を満たさない | その工事の主任技術者になれない |
| 遠方の現場まで2時間を超える | 移動時間の要件を満たさない |
| 連絡員や通信環境を用意できない | 遠隔で施工管理を行う体制がない |
| 他の兼任区分や専任特例と重複する | 制度の併用制限に該当する |
資格者が1人だけでは遠方の工事を受注しにくい
小規模な建設会社では、主任技術者になれる人が、営業所技術者等を兼ねている代表者1人だけということがあります。近接する非専任工事では複数の現場を担当できる場合もあるため、資格者が1人なら必ず2現場を施工できないわけではありません。
しかし、遠方の現場では、非専任工事であっても片道おおむね2時間以内という要件を満たさなければなりません。要件を満たさない場合は、営業所技術者等とは別に主任技術者となれる人を配置する必要があります。
福島市から静岡県内の現場を施工する場合
たとえば、福島市に営業所がある会社が、静岡県内の工事を施工する場合を考えてみます。通常利用する自動車や公共交通機関で、営業所から現場まで片道おおむね2時間以内に移動することは、通常困難です。
この場合、営業所技術者等を静岡県内の現場の主任技術者として兼任させることは難しく、別の主任技術者を配置する必要があります。工事を施工する能力があっても、技術者を配置できないために受注を断らなければならないことがあります。
受注できる地域や工事の範囲を広げるためには、従業員の資格取得を計画的に進め、主任技術者となれる人を増やすことをおすすめします。資格者を複数確保することは、工期の重複、病気、退職などに備えるうえでも重要です。
兼任の可否は工事を契約する前に確認する
営業所技術者等を主任技術者として配置できるかは、許可業種、契約営業所、技術者の資格、請負代金、現場までの移動時間、他工事の担当状況によって異なります。
契約後に兼任できないと分かれば、別の技術者を用意できず、施工体制を組めなくなるおそれがあります。判断に迷う場合は、工事を契約する前に発注者や許可行政庁へ相談することが安全でしょう。




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行政書士 佐藤勇太
