
福島県における10年の実務経験での建設業許可取得は、かなりハードルが高いため、行政書士に相談しても敬遠されがちです。過去10年以上をさかのぼっての書類の確認作業は、かなりの時間と労力を要します。工期が明記された契約書がなければ、月に1枚の請求書とその入金記録の提示(120か月分)が求められるからです。
建設業許可における営業所技術者の要件について解説
建設業の許可の要件は建設業法で定められており、当然のことながら全国どの都道府県でも共通です。そして、許可の要件の1つに、営業所技術者の配置があります。建設業許可(一般建設業)を取得するためには、営業所ごとに許可を受けようとする業種について、次のいずれかの要件を満たした専任の技術者を置かなければなりません。
- 許可を取得する業種に対応した国家資格等を持っていること
- 許可を取得する業種について10年の実務経験を持っていること
(学歴・資格により短縮可能な場合あり)
ここで、注意しなければならないポイントがいくつかあります。第一に、複数の営業所の営業所技術者を兼任することはできません。第二に、営業所技術者は営業所に常勤し、その職務に専念しなければなりません。そして第三に、実務経験は許可を取得する建設業の業種についての経験でなければなりません。
営業所技術者が果たすべき役割とは
ところで、建設業許可で設置が義務づけられている営業所技術者とは、いったいどのような役割を果たす方なのでしょうか。意外なことですが、建設業法には、営業所技術者の職務内容を具体的に定義した条文はありません。しかしながら、実務上は、以下のように整理・解釈されています。
- 適正な請負契約が締結されるよう、技術的観点から契約内容の確認を行う
- 請負契約の適正な履行が確保されるよう、現場の主任技術者・監理技術者のバックアップを行う
重要なのは、営業所技術者は現場に配置しなければならない技術者とは「別の者」とされていることです。つまり、原則として営業所技術者は営業所にいなければならないため、現場配置技術者になることはできません。もっとも、工事現場が営業所の近くである場合には、この規制は緩和されるケースがあります。
営業所技術者の実務経験期間はどのように証明するか
国家資格者を営業所技術者とする場合、要件を満たしていることを証明するのは簡単です。その方の資格者証のコピーを申請書に添付すれば終わりです。しかし、実務経験で営業所技術者の要件を満たそうとする場合には、1段階ハードルが上がります。過去にさかのぼって、客観的な資料により証明しなければならないからです。
ただし、他社での勤務経験があり、その会社から証明を受けることができる期間については負担が軽減されます。福島県の現在の運用では、元雇用主の方から「実務経験証明書(様式第9号)」を書いていただくことで、その期間の契約書や請求書などの書類の提示を省略することができるからです。
つまり、自分の会社での実務経験の証明(自己証明)の場合が、建設業許可申請において最も負担の大きい工程であるといえます。そして、これを10年間分やらなければならないとすると、たくさんの書類を確認し、整理しなければならないということになります。
実務経験の証明は、発注者との間で工事内容と工期が明記された請負契約書があれば、その期間の工事実績の証明ができます。しかし、建設業法第19条で適切な請負契約書の作成が義務づけられているにもかかわらず、実際には作成されていないケースも少なくありません。そうすると証拠力が乏しい請求書を用いざるを得ないことになります。
請求書は契約書とは違い、一方当事者が作成することが可能な書類です。そのため、請求書を実務経験証明資料とする場合は、請求書に記載されている金額が入金されたことを示す記録(通帳のコピー)と一緒に提示しなければなりません。請求書と通帳の入金記録を突合する作業もなかなか大変です。
実務経験の証明が難しいとされる福島県の運用
営業所技術者の要件は同じだとしても、それを審査する際の基準や提示を求める資料の範囲については、許可権者(各都道府県)に裁量があります。これは、各都道府県で公表している、建設業許可の「手引き」を比較するとよく分かります。
常勤性の証明と都道府県間の違い
営業所技術者の要件を満たしていることを証明するためには、まずは、その者が営業所に常勤していることを示す必要があります。常勤性は、健康保険の資格確認書や健康保険・厚生年金保険の標準報酬額決定通知書などにより証明しますが、この点についてはどの都道府県でも共通しています。証明の難易度に差はありません。
しかし、建設業許可を持っていない自社での実務経験を証明する際に求められる資料については、各都道府県によってバラツキがあります。例えば神奈川県の手引きには、「証明する期間各年1件以上」の工事に関する資料を提出する旨の記載があります。たとえ提出する資料が請求書だとしても、入金記録とセットで提出すれば、年に1枚で済ませることが可能なのです。
福島県における月単位での証明と資料の厳格な確認
これに対し、福島県の運用はこれよりも細かい単位での確認を前提としています。福島県では、「その年にやっていたかどうか」ではなく、「各月に継続して工事に関わっていたかどうか」を確認するという運用が取られています。そのため、実務経験の証明は、年単位でまとめて判断されるのではなく、月ごとに積み上げていく形になります。
より具体的にいえば、福島県で実務経験を請求書と入金記録のみで証明するためには、毎月1セットの提出が不可欠であり、10年分の経験の証明であれば最低120セット(厳密には121セット)の資料が要求されるということになります。神奈川県であれば12セットで済む可能性があることを考えれば、その差は歴然です。
さらに、提出する資料については、その中身も厳しく見られます。請求書の記載が「工事一式」といった抽象的なものである場合、その工事内容がどの業種に該当するのかが分かりません。このような場合には、そのままでは実務経験として認められず、見積書や注文書などを使って工事内容を補足する必要があります。
実務経験による営業所技術者の証明でお困りの方へ
福島県で実務経験による営業所技術者の証明を行う場合、実際に取り組んでみると、その大変さを実感される方が多いと思います。書類の数が多いだけでなく、その書類が証明に使えるかどうかを検討する必要もあり、思った以上に時間がかかります。その難しさのあまり、途中で手が止まってしまう方も少なくありません。
特に問題になるのは、集めた書類だけでは、実務経験の内容や期間が十分に読み取れないケースです。例えば、請求書の記載が抽象的で工事内容が分からない場合や、期間のつながりがはっきりしない場合には、そのままでは実務経験として説明しきれません。そのため、どの資料でどの期間を説明するのかを整理し、必要に応じて他の資料で補足していくことが重要になります。
しかし、この整理の段階で方向を誤ると、いくら資料を集めても、全体としてうまく説明できないということになりかねません。実務経験の証明は、単なる書類集めではなく、内容と期間を矛盾なく説明できる形に整える作業です。このような理由から、実務経験による証明については、早い段階で専門家に依頼することをおすすめします。
当事務所では、資料の確認から整理、申請書類の作成まで一貫して対応しております。なお、書類の確認および整理については、その内容に応じて書類確認料を頂戴しておりますが、現在お持ちの資料でどこまで証明できるのかも含め、事前に把握することで無駄な手戻りを防ぐことができます。実務経験の証明でお悩みの方は、一度ご相談ください。





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行政書士 佐藤勇太