福島県を拠点に活躍する行政書士・佐藤勇太さんに、建設業許可の重要性や取得のポイント、事務所のサポート体制や強みについてお話を伺いました。
――本日はよろしくお願いします。早速ですが、佐藤さんと福島県との関わりについて教えてください。
佐藤: 私は福島県で生まれ育ち、大学在学中以外はずっと福島県内で過ごしてきました。東日本大震災の後、これからの自分自身の生き方を考えたときに、地元で頑張っている事業者を応援したいと思い、行政書士事務所を開業しました。開業後はコロナ禍に遭遇してしまい、なかなか大変な時期もありましたが、何とか経営を軌道に乗せることができました。
――建設業許可業務に携わるようになったきっかけを教えてください。
佐藤: 父親が経営していた税理士事務所の関与先に建設業者様がいらっしゃったことから、そのつながりで少しずつ仕事の依頼が来るようになりました。決算変更届の作成や許可の更新などの業務を遂行するには、建設業法の理解はもちろん、建設業界について知っておく必要があります。
仕事をしていく中でお客様からお話をお聞きしたり、専門書を読んだりしているうちに、興味を持って勉強するようになりました。最初に新規の建設業許可の依頼があったのは、開業してから1年後くらいだったと思います。
――お仕事の依頼はどのようなルートで来るのでしょうか?
佐藤: 現在は他の行政書士さんからのご紹介や、一度仕事をさせていただいたお客様からのご紹介が多いですね。地元の二本松市をはじめ、福島市、郡山市など福島県中通り地方の建設業者様と継続的なかかわりを持たせていただいています。
建設業許可を取得すると年に1回は決算変更届の件で、5年に1回は許可の更新の件で、継続的に関与できることが嬉しいですね。まだ件数は多くはありませんが、経営事項審査や入札参加資格申請にも携わるようになっています。
――主にどのような業種の顧客が多いのでしょうか?
佐藤: 土木系の業種も建築系の業種もあり様々ですが、中には製造業がメインの事業者様もいらっしゃいます。工場で製作した工作物を設置する際には建設業許可が必要ですので。また、兼業で宅建業をされているお客様もいらっしゃいます。
――今までで特に印象に残っている事例はありますか?
佐藤: 他の事務所に頼んだけど半年たっても返事がないという業者様を紹介されたケースでしょうか。水害の被害に遭われてしまい、過去の証明が難しかったのですが、各所から証明書を取ったりヒアリングしたりして新規許可までこぎつけたのは印象に残っています。許可を取るとひと口に言っても、お客様の状況は様々です。それぞれの案件に固有の難しさがありますね。
――建設業許可の重要性について教えてください。
佐藤: 資材高騰や人手不足といった時代の変化がある中でも、新規許可は税込500万円の基準がずっと続いています。建設業許可制度には発注者の保護という目的がありますので、この基準はすぐには上がらないのではないかと思います。
何を言いたいのかというと、今後は材料費込みで500万円以内に収まる工事が少なくなるのではないかということです。だとすれば、できることなら許可を取っておくほうが良いということになります。たとえ少額の工事でも、許可がある方が信用されるというメリットがあるでしょうね。
また、民間工事でもコンプライアンスが厳しくなり、上から「許可を取ってくれ」と言われるケースも増えているとよく耳にします。事業を成長させていく過程において、建設業許可の取得は非常に重要であると考えています。
――許可取得でつまずきやすいポイントはどのようなところでしょうか?
佐藤: 営業所の技術者が国家資格等を持っていると比較的スムーズですが、過去の実務経験だと大変です。福島県の場合は1ヶ月に1件の証明資料が必要になることがあります。仮に10年なら120ヶ月分の資料(請求書と入金記録)が必要になるので大変です。福島県は結構大変なほうかもしれません。
事業者様から「うちも取れる?」と聞かれることがありますが、取れると思っていてもそのままでは取れないことがあります。許可の要件をクリアすることを客観的に証明できる資料がなければ、建設業許可を取ることができないのです。まずは手元にある資料を確認して、不足しているものを洗い出す必要がありますね。
また、特に家族経営を中心とする小規模な事業者様では、許可を維持していくことにも注意を向ける必要があります。経営業務の管理責任者が欠けたり、営業所の技術者がいなくなったりすると致命的ですので、その場合にどうカバーするかを前もって考えておいていただきたいですね。
――更新時のポイントについて教えてください。
佐藤: 毎年の決算変更届だけでなく、会社の状況が変わった時の変更届(建設業許可変更届)を提出しているかどうかもポイントとなります。会社の実態と登記簿の記載事項が異なると登記の変更からスタートしなければならず、更新手続きの前の作業がいろいろと面倒になりやすいです。
――最新の法改正や規制の変化はどのような影響を与えていますか?
佐藤: ご存じのとおり、建設業界は人手不足、後継者不足が深刻な状況です。国は技術者の要件を緩和するなどのサポートをしていますが、それでも経営状況があまり良くない事業者さんにとっては、書類提出などの手続きは煩雑で単なるコストにしか映らないかもしれません。
しかし、コンプライアンスが厳しく言われるようになった令和の時代、法令で定められた義務を果たさなければ、会社自体の存続が危うくなります。義務づけられている手続きには、適切に、そして正直に対応していかなければならないと思います。
――行政書士の関与のあり方はどうなっていきますか?
佐藤: 専門の事務員の方がいらっしゃるところと、そうでないところでは違うのではないでしょうか。後者の場合は、行政書士が外注の事務担当のようになり、すべての手続きをカバーする必要があるのかなと思います。
事務員さんがいらっしゃる会社でも、頻繁に行われる法改正に逐次対応していくことは難しいのではないかと感じます。法改正情報の提供など、書類作成に該当しない部分でも、行政書士が役に立つ部分は多いのではないかと思います。
――事業承継についてはどのようにお考えですか?
佐藤: 団塊の世代からの代替わりが進んでいますが、事業承継における親子間での意思疎通がうまくいかないケースも多いようです。そういった場面で行政書士が入ることで、スムーズに進むようになれればと思います。引き継ぐ方と同じ年代の行政書士として貢献できれば嬉しいですね。
――事務所のサポート体制と強みを教えてください。
佐藤: 個人事務所なので私自身が直接対応し、お客様の規模や状況に合わせたサポートを心がけています。対応はスピーディーに行うことを心がけていて、依頼者をお待たせしたり、どうなっているのかわからないまま放置したりするようなことはありません。 当たり前かとは思いますが、レスポンスは早めにして、ご心配をおかけしないようにしています。
手前みそですが、「逐次報告してくれるから安心して任せられた」というのはお客様からよくいただく言葉です。 建設業許可から、産業廃棄物処理業など関連する事業を始めるにあたっての行政手続きをサポートさせていただいたり、相談に乗ったりすることも多いですね。農地の転用は当事務所のもう一つの業務の柱なので、土地や農地の利用のことでご不明なことがあればぜひご相談ください。
――そのほかに佐藤さんが業務を行う上で心がけていることはありますか?
佐藤: うーん。これも当然のことですが、私は事実と異なる内容で申請するようなことはいたしません。守らなければならないことについては、お客様には耳が痛いことでも、分かりやすくしっかりお伝えしています。
――これから建設業に参入する方へのアドバイスをお願いします。
佐藤: 事業が公共工事を受注する段階まで至った場合、利益は大きくなるかと思いますが、なかなか一つの世代でそこまで行くのは様々な困難があると思います。しかし、そういったやる気のある方をサポートしたい、会社を大きくしていくための支援をしていきたいという思いは強いです。
その最初のハードルが許可取得になることが多いので、そこからまずサポートさせてもらえたらと思います。その際、書類や証拠はとても大事になるので、できるだけ取っておいてほしいですね。また、「今取りたい」ではなく「いつか取りたい」でも相談していただければ、必要なことをしっかりご案内します。
――建設業界の未来や展望についてどのようにお考えですか?
佐藤: 建設業は絶対に無くならない事業だと思います。今後は高度成長期に整備されたインフラを作り直していく必要も出てくるでしょう。人口減少の地方では建設業者さんはなくてはならない存在です。その建設業者さんがいい加減な業者さんになってしまうといけないので、しっかりサポートしつつ、利益を上げられる提案をしていければと考えております。私もしっかり勉強しなければならないでしょうね。
行政書士の仕事は書類作成と提出代行だと思われているかもしれませんが、それは形式的な成果であって、私の仕事の本質はその前段階にあると考えています。言われたことをそのまま書類にするということではなく、お客様がおっしゃっていることが適正か、どうしたらお客様の目標を実現できるのかを検討して提案することが大事なのではないでしょうか。
――福島県の建設業界の特徴について教えてください。
佐藤: 震災復興過程で許可業者が多くなりましたが、除染関連の土木工事がなくなり、厳しい状況にある業者さんも多いです。これから生き残っていくには、会社の譲渡や合併、他業種への展開などもより増えていくと思います。
福島県は手続きに関する情報がかなり少ないので、自社で進めていくのはかなり大変かと思います。同じ県内でもローカルルールが強いという特徴もあります。さまざまな業者さんに対して適切なアドバイスができるよう、より研鑽していきたいですね。
――地域に根差した行政書士として、福島の建設業界が抱える特有の課題に向き合いながら、地元事業者の発展に貢献し続けているのですね。
佐藤: はい。建設業は地域のインフラ整備や災害復旧など、地域社会を支える重要な産業です。特に福島県は震災以降、様々な変化を経験してきました。これからも地元の事業者さんが安定して事業を継続し、発展していけるよう、単なる書類作成代行ではなく、事業の成長をともに考えるパートナーとして、地元の方々の力になれるよう、これからも精進していきます。
――本日はありがとうございました。
佐藤: ありがとうございました。